四十三話 ページ3
「で、どういったご用件かな？」
笑顔で僕を歓迎してくれたのは、怒乃さんの父親。
その顔立ちを見るに、怒乃さんは母親似のようだった。
僕は促されるままに怒乃さんの父親の前に座った。
「…単刀直入にお聞きします。僕を一日だけでも警察にさせて頂くことは可能でしょうか」
突然な質問に、怒乃さんの父親は面食らったような表情になる。
無理べからず。
「………簡単に言うものじゃないよ、警察は人々の安全と世界の秩序を守っているんだから」
「つまり、秩序を乱された後に難癖つけるだけの探偵に警察を名乗る資格はないと…」
「そんなことは一言も言ってない…ただ、君はまだ子供だろう？」
「子供なのは否定しません。ですが僕は、子供だと制限される意味が理解できません」
「大人はある程度進む位置が決まってしまっているけど、子供はまだ、路線変更が出来るんだ。こんなことをしてもしも取り返しのつかないことになったら？」
「なったとしても僕は構いませんけど。それに、僕よりも町民でしょう？津露町を守るのは津露警察署の警察ですよ？探偵の仕事じゃない。僕がここで捕まえないといけない人がいるんです」
「それは僕たち警察に任せられないのかい？」
「任せられたらとっくに被害届を提出しています」
「…その人は、君がそこまでして捕まえないといけないのかい？」
「えぇ、誘拐ですからね。身代金を請求しない誘拐ですよ」
「誘拐？それこそ警察の十八番じゃないのか？」
「警察を連れずに僕だけが、ある場所に来いと言われたんです。きっと、犯人は僕が目当てなんです」
「なら、余計に君は動いちゃいけな…」
「何故ですか？今ここで動いちゃいけないのは警察なのではないですか？」
「そうかもしれない、だが、君でしゃばる必要もない」
「あるんです。僕じゃないと、捕まっている人質が殺される。だから僕が行かないと」
「…わざわざ自分を殺すようなことはする必要ない、だから僕たちが…」
「僕たちが、何ですか？大人数押し掛けても、銃なりなんなりやられたらそれで終わりなんですよ？リンチほど失敗するものはありません」
「人聞きの悪い言い方だね」
「僕は悪い子ですから。ずる賢いことも卑屈なことも自重してます」
「……つまり、何が言いたいんだ？」
警察を連れて来てはいけないのなら、指名された僕が警察であれば逮捕など容易だろう？
「お願いします。僕を１日でもいいから、警察にして下さい」
やれることは徹底的にやるつもりだ。
土下座など、造作も他愛も全くない。
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