【Kiramune】たった1人のシンデレラ�供敍�野自由】

092 ページ45

.


ソファに並んで座って洋画を観ている。
悲しいお話の恋愛映画で、物語は終盤に差し掛かっていた。

入野さんは演技の研究も含めているのか、真剣な眼差しで映画の俳優さんに観入って集中している。
私はというと、既に涙が溢れて止まらなかった。


『Mary!...Why?Why don't you come with me!』

『Sorry,but...but I have to go...』

『I'll wait for you!』

『No!No,please find new precious.』

『Mary!』


ラストは、メアリーがマイクを置いて飛行機に搭乗するシーン。

入野さんは「字幕なんかいらないよね？現役女子大生だもんね？」と少し煽りを入れてきたが、なんとか頼んで字幕をありにしてもらった。
リスニングと洋画じゃ訳が違う。


「やっぱこの俳優すげえな・・・」

「そうな゛ん゛ですか、？」

「うわ、ひっどい鼻声(笑)」


私の涙に気付いた入野さんは、袖で涙を拭ってくれた。


「もー、今の映画でどうやったらそんなに泣くの？」

「・・・だって、」


入野さんがいなくなったら嫌だから。
マイクに感情移入してしまって、入野さんがいなくなってしまったらどうしよう、なんて考えた。

そう伝えると、「Aはほんとたまにネガティブになるよな」と言って私を抱きしめて笑う。


「ここにいるよ、ずっと」

「もう、笑わないでください・・・」

「いや、可愛いなと思って(笑)」

「・・・」


む、と頰を膨らましていたら、入野さんの人差し指と親指に挟まれてしまう。

そのままむにむにと遊び始める入野さんに呆れた私は、先程まで考えていた“入野さんがいなくなってしまったら”なんてことはもうすっかり忘れて、涙さえも止まっていた。


.

093→←091

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す