【Kiramune】たった1人のシンデレラ�供敍�野自由】

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「もう！入野さん！置いていきますよ！」

「んなこと言ってもどうせ俺の車じゃん」


「ねー、Aも手伝ってよ」そう言って入野さんは必死に車の鍵を探している。


予定通り目を覚まして、朝食を軽く摂って、二人だと危ないからと少し時間をずらして入野さんの家まで行って、そこまではなんの問題もなかった。

本当にこの人は！
何度忘れ物探し物をする気なのか。


「もう、本当に心は小学生なんだから・・・」


ぼやきながらもリビングの机を捜索。

雑誌を持ち上げると、その下に鍵はあった。


「入野さん、ありましたよ」

「マジで！？俺そんなとこ置いたかなー」

「GPS付けたんじゃなかったんですか？」

「あー、連動してるアプリ消しちゃったんだよね」


は？
意味がないにも程がある。

31にもなってこの人は・・・いつになったら成長するのだろうか。
一生このままな気がする。
老化現象を伴えばもっと酷くなるのかと思うと頭が痛い。


「ごめん、お待たせ。行こっか」

「待たせた代わりに、ちゃんと楽しませてくださいよ」

「はいはい、仰せのままに」


今日のために新しい服を買って着て来たけど、私の家で見られてしまったからか反応がない。

髪だっていつもより可愛くしたし、お化粧だって何も無い日より全然時間をかけてやったのにな。
もし同棲したら、そういうドキドキもなくなっちゃうのかな。

なんて、少しモヤモヤして。
ふと顔を上げると、入野さんとバックミラー越しに目が合った。


「その服、初めて見た」

「！・・・前に、買ったんです」

「いいじゃん、似合ってる。かわいい」

「っ、あ、ありがとう、ございます・・・」

「なに、照れてんの？」


入野さんはエスパーだ。

・・・そんなことはなくても、私の望んでいることを察してしてくれるし、察しているのかたまたまなのか、言って欲しいことを言ってくれる。


照れた私を揶揄う入野さんも、後ろから見た耳は少し赤くて。

それだけで嬉しくなった単純な私は、幸せ者だ。


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