【Kiramune】たった1人のシンデレラ�供敍�野自由】

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そのことをきちんと入野さんに伝えてお断りすると、少し残念そうに『そっか』と言った。


『でも、俺はAのそういうとこも好きだよ』

「っ、な、なんですか、急に」

『あ、照れた？』


ちょっと真剣そうだったのにすぐに揶揄うような口調になって、『かーわーいーいー』などと茶化してくる入野さん。

少し腹が立ったので、


「・・・私の方が、入野さんのこと好きです」


拗ねてそう呟いた。

電話の向こうの入野さんは、微かに聞こえるため息を吐く。


『もう、早く会いたくなるようなこと、言わないで』

「だって、入野さんより好きですもん・・・」

『わかった、わかったから！』


きっと入野さんは私を抱き締めたくてしょうがないんだろうな。
自惚れているかもしれないけれど、入野さんがこういう時に考えていることくらいはもうわかってしまう。

それがなんだかすごく嬉しくて。


「私も、入野さんに早く抱き締められたい」

『〜っ、ほんと、もうやめてって・・・』


だんだん小さくなる入野さんの声。
その顔が見られないことがとても悔しいけれど、今日は珍しく私が入野さんのことを翻弄できていた気がするので、良しとしよう。


電話の向こうの、遠くから、『そろそろ後半リハ始めまーす！』と微かに声が聞こえる。

時間切れ。
次の電話は、いつになるのだろうか。


「頑張ってくださいね」

『ありがと。また電話する』


はい、と言う前に電話が切れた。
入野さんに会うのも楽しみだけど、ミュージカルを観るのも楽しみ、だな。


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