42、包帯男と素敵帽子と元女子高生 ページ42
××
A先輩に頂いた紙を見ながら、マフィア内を走っていた。丁寧に、そして分かりやすく描かれた地図にA先輩の几帳面さが表れている。
「……此処、かな」
威圧感を放つ重厚な扉に手を伸ばす。
恐怖心はあるものの、入らなければA先輩と勝負した意味がない。深く息を吸い込み、扉を開け放った。
「───二度目はなくってよ!!」
内股でそう宣言する男性に、真顔でそれを見つめる太宰先輩。
「すみません、お邪魔しました」
「待て待て待て」
襟首を掴まれ、恐る恐る振り向くと橙色の髪を持った素敵な男性がいた。素敵。私がそう感じた部分は彼が被っていた黒の帽子にある。気品があって、なんだか───とても懐かしいような。
思わずそっと、男性の帽子に手を伸ばしかけてしまう。攻撃かと思ったのか、男性は私から距離を取った。
「手前……何する気だった」
「いえ、あの、すみません。ただ。その。その、帽子、素敵だなと」
男性は自分の帽子に触れ、少し顔を赤らめる。
「げぇぇっ!」
苦虫を噛み潰したような声が響き、視線を移すと、太宰先輩が嘗てないほど顔を歪ませていた。
「こんなことは云いたくないのだけれど……Aちゃん、趣味悪すぎ。もしかして駄目男が好きなタイプ?」
「誰が駄目男だお前に云われたくねぇわ死ね」
「あれれー?可笑しいぞ〜?蛞蝓が喋ってる〜」
「死ね青鯖」
成人男性二人の小学生男子のような悪口合戦が開催され、正直なところ少し引いた。というか、太宰先輩……なんだか囚われて生活を満喫している気がするのだが気の所為だろうか。
「……
太宰先輩は踵を鳴らしながら、此方へと歩いて来る。私の名を聞いて中也、と呼ばれた男性は眉を寄せた。
「……A?Aって七竈Aか?あの百億の……」
「そう。百億ちゃんだよ。良い女でしょ?」
「良い女って……未だ未成年だろ。手前、本当見境ねぇな。この女泣かせが」
「女性より身長の低い蛞蝓に比べればマシだね」
「控えめに云って死ね」
「控えめって言葉の意味知ってる?」
私を置いて、二人は再び口論を始める。
その様子から見て、彼らは初対面という訳ではなくそれなりに旧い仲であるのが読み取れた。
あれ……私、助けに来る必要なかったんじゃ。
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黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
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