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24、二人で共に逃げれば ページ24

××



武装探偵社の近くに位置してある公衆電話を使い、誰かへ連絡をしている中島先輩を眺めながら私は思案していた。百億の賞金首。国木田さんが云った言葉が脳に響く。


「魅了の異能……そうか、貴様が"百億の女"か」


芥川の言葉を思い出し、顔を上げる。
そういえば芥川も百億がどうとか云っていた。
芥川は知っていたのだ、私が懸賞首にされていることを。だとしたら、私をマフィアへ連れて行こうとしたことにも納得がいく。


「可笑しなことになっちゃったなぁ……」


 わたしは、ただ───


「Aちゃん、どうしたの?」


電話を終えた中島先輩が心配そうな表情を浮かべ立っていた。私は首を横に振り、行きましょうか、と微笑む。行く宛も行き先も、私達にはない。けれど、きっと中島先輩となら何処へでも行ける気がした。たった数日間で彼をこんなに信用してしまっている。私自身もその理由はよくわからなかった。


「こんな所に居ったかお前ら」


何やら沢山のファイルを抱えた国木田さんが、怪訝そうな表情で此方に歩み寄ってきた。中島先輩は心配いりません、と声を絞り出す。ああ、彼は本当は探偵社にいたいのだ。やっと見つけた居場所だから。

中島先輩の云った言葉に「はあ?」と国木田先輩は首を傾げる。中島先輩は下を向くと、私の手を握り締めた。私もその手を握り返す。二人で一緒に走った。なんだか、駆け落ちみたい。


「……本当に良いのですか、これで」

「うん……良いんだよ。僕さえいなければ探偵社は危ない目に遭うこともない。……Aちゃんこそ、良いの?僕についてきて」

「それは愚問というものですよ、先輩」

「……ははは、ごめん」


中島先輩は何処か吹っ切れたように笑った。
でもその笑みは矢張り無理しているように感じてならない。中島先輩の表情をただ黙って見つめていると近くから発砲音が聞こえてきた。中島先輩は目を見開き、振り向く。

銃声が聞こえてきた先は、"武装探偵社"だった。


「行こう、Aちゃん!」


中島先輩に手を引かれ、私達は再び探偵社へ戻る。彼の表情には緊迫が走っていたが、それでもその朝焼け色の瞳はキラキラと輝いていて思わず笑みが零れた。



**

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黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年6月14日 21時

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