約束【桃】 (ページ4)

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さっくんが引っ越してから、自然とひーくんと一緒にいることが多くなった。

今思えば、あまりにも落ち込んでいたわたしを放ってはおけないと、兄貴肌らしいひーくんの優しさだったのかもしれない。

ひーくんは習い事もしてたし、人気者で友達に誘われることも多かったから、さっくんみたいに毎日とはいかないけれど

空いてる日は一緒に遊んで家まで送ってくれた。

わたしはわたしで今までずっとさっくんと居たから女の子と遊ぶこともあんまりなかったのだけれど、

子どもながらの適応能力ですぐに他の友達もできた。

時の流れは不思議なもので、

あんなに悲しみのどん底にいたのに、月日が経つにつれてだんだんと悲しみも薄れていって

気が付けばさっくんのことは時々思い出すぐらいになっていた。

頻繁にやり取りしていた手紙も、悲しみが薄れていくのと比例していつしか自然に無くなっていった。

…

そしてさっくんのいない二度目の春、わたしたちは中学生になった。

友「Aちゃーん！また呼び出し？
モテる女はつらいね〜」

中学生になったわたしは何度か男の子に告白されるようになった。

だけどその度に思い出すのはさっくんで。

心の片隅にいるさっくんが、そしてあの日の約束が忘れられなくて、今まで一度も好きな人ができたことはなかった。

学校で一番かっこいいと噂されている先輩からの告白を断った時には、

理想が高すぎるだとか、もしかしてそっちの気があるんじゃないのかとか、あることないこと噂されたけど

…だって好きじゃないんだもん。

どんなにかっこよくてもどんなに背が高くてスポーツ万能でも、

わたしの記憶の中の内気で笑顔が可愛くていつも一緒だったあの少年が、誰かを好きになることを許してはくれなかった。

このままじゃわたし一生好きな人出来ないかもなぁ。

そんな風に考えていた叩贒の夏、学校で一番かっこいいと噂されていた先輩に二度目の呼び出しをされた。

しつこいなぁ、なんて思いながら呼び出された公園に行くと、何故かその先輩だけじゃなく取り巻きらしい男の人たちが数人いる。

すぐに危険を察知して踵を返そうとした時にはもう手遅れで、取り巻きたちに囲まれてしまっていた。