約束【桃】 (ページ20)

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１時間の自由時間が終わって、照は接客に戻って行った。

人気者の照は友達に絡まれたりして、ほとんど二人きりでは居られなかったけど、

一緒にタピオカを飲んだりお化け屋敷に入ったりして楽しかった。

わたしはトイレを済ませてドアに手をかけると

「岩本くんまじかっこいい！あの格好は反則だよね」

なんて声が聞こえてきて思わずトイレから出るのを躊躇う。

女子たちは化粧直しをしながら会話をしているようだった。

女1「あの格好と筋肉で守ってやるとか言われて落ちない女いる？」

女2「確かに…あれはヤバいかも」

女1「でもさー、Aちゃんが彼女じゃ勝ち目ないよねー」

女3「…それがさ、わたし夏休みに入る前に岩本くんと深澤くんが喋ってるの聞いちゃったんだけど…あの二人本当は付き合ってないっぽい」

その言葉にドキンと心臓が飛び出そうになる。

女2「え、なにそれどういうこと？」

女3「岩本くんが、本当の彼氏でもないのにキスなんかできるか！みたいなこと言ってるの聞いちゃったの。
それでね、二人と同中の子に聞いたらなんか付き合ってるって噂だけで二人で遊んでるのとか誰も見たことないって」

女1「それまじ？」

女3「その子曰く中学のときにAちゃんがちょっとヤバい目にあったから、Aちゃん守るためにフェイクで付き合ってるんじゃないかって話」

女2「まじ？まぁでも岩本くんみたいな彼氏いたら変な男寄ってこなくなるだろうし、ありえるかもね？」

女1「え、二人が付き合ってないんだったらわたし本気で狙っちゃおうかな」

女2「あんな可愛い子見慣れてる男落とせるー？」

女1「やってみないとわかんないっしょ！とりあえず文化祭終わるまでに絶対連絡先聞く！」

なんて話しながらその子たちは行ってしまった。

完全に出るタイミングを失って結局最後まで聞いてしまった…。

本当の彼氏でもないのにキスなんかできるか、か。

そっか、照そんなこと言ってたんだ…。

なんでだろう…胸がチクチクする。

確かにわたしと照は本当の恋人ではないから、キスなんかしないのは当たり前のことなのに

なんだか拒否されてしまったみたいで悲しかった。

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