a false lover (ページ2)

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♯2 ページ2

藤ヶ谷の幸せが一番だから、藤ヶ谷の悲しむ顔は見たくない

でも彼女に向ける笑顔を見るのはやはり辛い

その彼女は少し前親の勧めで、半年留学の為渡米した
日本を離れる恋人を藤ヶ谷と俺は離れたところから見送った帰りなのだが、藤ヶ谷の表情が固い

元々頻繁に逢えなかった2人だったのに半年も顔すら見ることも出来なくなった訳だしな……
でも心のどこかで、彼女の目を気にせず藤ヶ谷の隣りに居られる喜びに嬉しさが増し、そんな自分に後ろめたさも感じていた

彼女とこの先も続いて欲しいと願うのも本音だが、彼女に向ける熱い視線を少しでも俺にも向けて欲しいと願うのも本音
はぁと小さく息を吐き、気持ちを切り替え、お昼何処にしようと切り替えた時

「…俺このままでいいのかな…」
「え？」

ハンドルを握る藤ヶ谷の横顔は今まで見て見ぬふりをしていたこの先の事に決断をしなければという覚悟が垣間見れる

「本当に俺ら付き合ってるのかなさっき空港で見送った時も遥の家族や友人が周りを囲み、少し離れたとこからそれを見て、恋人だけど近くで見送ることも出来ない」
「…」
「勿論それを承知で付き合ってるけど、お互い他人の目を気にして付き合う事に疲れてきたというか…」
「……」
「彼女と居るより北山と一緒にいる方が楽しいしな」

藤ヶ谷からの予期せぬ言葉に心臓が跳ねる
素直に嬉しいと感じる
俺が女の子なら…間違いなく彼女より、藤ヶ谷の支えになれるのに…

「…嬉しいよ…俺も藤ヶ谷と居ると楽しいからさ」
抑えようとしても自然と口角が上がってしまう顔を隠すようにやや下を向き返事をすれば”ありがとう”と返事が返ってきた

この恋は成就しない片思いだけど、俺を必要としてくれている今、やはり幸せだ

これからも藤ヶ谷の一番の親友というポジションで、支えていこうと改めて心の中で誓った時

「危ない！！」
大声で叫ぶ藤ヶ谷の声に顔を上げると、前方で対向車線を走っていたトラックが、カーブを曲がりきれず前の車に当たり更にそのままこっちへ向かってきた

怖くなり再び顔を下げギュッと目を瞑り小さくなる
その後思いっきりハンドルを切られ、身体が傾いた所を引き寄せるように藤ヶ谷が覆いかぶさってきた

「北山！！！！！！」

強く抱きしめられた叫び声の後、大きな衝撃があり藤ヶ谷と呼び返すことが出来ず、そのまま意識を無くした