▼.朝に咲いた嘘の造花 ページ16
ちく、と痛みを感じて重い瞼を持ち上げる。その隙間から差し込んできた目映い朝の光と、殴られたような頭痛に、思わずぎゅ、ともう一度目を閉じてしまう。
「あ、起きた」
耳元に届いた、誰かの声。
誰かが傍にいるらしい。今度はゆっくりと目を開けば、ほんの数糎先に、此方を覗き込む二つの目。
「ぅわ、」と思わず声を上げて、顔を離す。
____否、離そうと、した。
「だぁーめ」
私は横に向いて寝ていたらしい。そして、隣に横たわる“それ”が、私を抱き締めているのだ。しかもそいつは私が気づかないうちに、がっしりと頭を拘束するときた。
……なんでこの人がいるんだろう。
うんざりしながら、私は離れてくれないその人に苦言を呈す。
「何ですか……太宰さん」
「おはよう、A」
「……おはようございます」
とりあえず挨拶を返せば、太宰さんはにこ、と笑って、私の頭を固定していた手で私の頬を撫でる。
「……」
「……」
何も言わずに、太宰さんは私の頬を撫で、そのまま首筋に這わせた。ぞわり、と背筋を撫でられたような感覚だ。
太宰さんの手はそのまま、肩を伝い、脇腹、腰まで降りてくる。ちら、と私の方を確認してから、そのまま____。
そこで、私はその手を掴む。
「……何、しようとしてるんですか」
「え? いや別に。
昨晩はちょっとやり過ぎたから、優しくしようかなぁ、って」
「……は?」
その言葉に、思わずぽかんとする。
そんな私の様子を見た太宰さんはさも愉快そうに笑いながら、今まで私を抱き寄せていたもう片方の手で、更にぎゅ、と距離を縮める。
「うわ、ちょ、」
「昨日の夜、Aはすっかり酔っていたもの。覚えてなくても仕方がないよ」
「……え、」
まさか、とある考えが頭をよぎり、さあっ、と顔から血の気が引いていく。
私は慌てて自分が今身に付けているものを確認する。少なくとも、生まれたままの状態ではない。
薄手のキャミソールと短パン。
……を、確認して、ぴし、と体が硬直する。
「な、にこれ」
キャミソールから出た、赤い跡を見つける。呆然としながら、太宰さんの顔を見た。
きっと今、私は泣きそうなほど情けない顔をしていることだろう。
「わ、私、太宰さんと、どこまで」
「私知らなぁい。
身体に聞けば分かるんじゃない?」
そう言って太宰さんが私の腰を撫でるものだから、つい平手打ちをかましてしまった私は、悪くないと思う。
2019/8/9 硝子屋
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硝子屋(プロフ) - 猫また猫さん» 了承ありがとうございます。リクエストですね、少々お待ちください…… (2020年2月24日 23時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - すみません夢主ちゃんと社長は結婚していない設定でお願いします (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫また猫 - 硝子屋さん» リクエスト失礼しつれいしますね!!福沢社長で子どもを預かる話をリクエストしたいです社長と夢主ちゃんは結婚している設定で (2020年2月24日 17時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
猫 - あ、全然混浴でなくても大丈夫です!無理をさせてしまいすみませんでした (2020年2月24日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - 乱歩信者さん» リクありがとうございます!少々お待ちください…… (2020年2月20日 21時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:硝子屋+ソーダ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月25日 6時