10.哀れみ ページ10
禰豆子の側まで這って行った俺はその体をぎゅっと抱き締める。
「まぁとりあえず、先輩の背中をよく見ていてください」
俺の側までやって来た彼女に言われて、義勇さんの方を見た。
「血鬼術 刻糸輪転」
鬼がさっきとは違う技を繰り出そうとしていた。
けれど、義勇さんは凄く落ち着いている。
「全集中・水の呼吸 拾壱ノ型」
「拾壱の型!?」
そんなのがあるのか?
鱗滝さんに教えて貰った型は拾までだ。
「───凪」
鬼の糸が義勇さんの間合いに入った途端、全てバラけた。
信じられないと言った表情の鬼が、もう一度何かをしようと腕を動かす。
けれど、その間に簡単に義勇さんは鬼の頸を斬ってしまった。
「凄い…」
思わず呟けば傍らに膝を付いていた女性が言う。
「ずるいでしょ?あの技。間合いに入ってきた術を凪ぐことが出来るみたいなのよね。義勇が編み出した技なんだけれど、いくら頼んでも教えてくれないの」
ちらっと彼女を見上げる。
「あの、貴女も水の呼吸を使うんですか?」
「えぇ。…あ、申し遅れました。私のことは琴音と呼んで下さい」
「琴音さん…俺、竈門炭治郎と言います」
「炭治郎くんですね。…あら?」
彼女が何かを感じて、義勇さんたちの方を向いた。
頸を切られた鬼が、何かを探すように腕をもがき動かしてこちらに歩いてくる。
ドッと地面に足を引っ掻けて、直ぐそばに倒れ込んできたその小さな体からは抱えきれない程大きな悲しみの匂いがした。
そっとその背中に手を乗せてやる。
ハラハラと完全に体が崩れ去って、鬼が来ていた着物だけが残った。
すると、義勇さんが歩いてきて、その足が鬼の着物を踏みつける。
「人を喰った鬼に情けをかけるな。それが子どもの姿をしていても関係ない。何十年何百年生きている化け物だ」
義勇さんの言っていることは最もだ。
でも、それでも……
「亡くなっていった人たちの無念を晴らす為、これ以上被害者を出さない為…勿論俺は刃を振るいます。だけど、鬼であることに苦しみ、自らの行いを悔いているものを踏みつけにはしない」
「炭治郎くんは優しいんですねぇ」
そんな琴音さんの哀れむような声がした。
それは俺に対してなのか、鬼に対してなのかは分からなかったけれど、構わず続ける。
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月見(プロフ) - おしゅらさん» ありがとうございます!ゆっくりとマイペースで更新頑張りますね(*^^*) (2021年10月13日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
おしゅら - ゆっくりで構いませんよ(*´ー`*)気長に待っていますので月見さんのペースで更新なさってください(^^) (2021年10月13日 18時) (レス) id: 2609acdfa8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年9月12日 12時