p e r f e c t _ 5 (ページ27)

今日:4 hit、昨日:4 hit、合計:102,161 hit

211 ページ27

.

リハーサルが始まる。

張り詰めた空気、
本番前のこのリハーサルは、
なににも変えられない緊張感漂う雰囲気で、
初めてそれを目の当たりにした時、
その空気に飲まれてしまいそうになったことを覚えている。

二手に分かれたポジションで、
あの、トロッコに乗り込む４人を後ろから見ていた。

西「理央、？」

周りの声が、静かになるくらい
西島くんの声が耳に届く。

トロッコに乗り込む西島くんと、
その前に登っていた理央さんの足が止まる。

西「理央、降りてきて。…ちょっとトロッコスタートするの止めて、向こうのほうにもインカムで伝えてくれる？」

『あ、はい…大丈夫、ですか』

西「うん、大丈夫だから連絡して。…宇野、日高でもいい、理央支えてやって。」

先に登っていた実彩子と日高さんが
それに気づいて降りてきて、
実彩子が理央さんの体を支える。

『っ、は、…っ』

宇「理央、ゆっくり息しよ。ゆーっくり吐いて、吸っちゃダメ。」

『ちが、う…っ、』

宇「うん、大丈夫よ。ちょっとだけ休もうか、…息吸うと苦しくなっちゃうからね」

うわ言のように、呟く悲痛な声。

こんなにも、追い詰められていたのか、
怖くなった。

こうまでして、あのステージに登らないといけないなにかが、
こんな追い詰められてまで、
ファンの子の前に立つ、なにかが、

彼女に、

いや、彼女も含めて、メンバーにあるのか。

『Aちゃん、』

「っ、はい。」

『大丈夫、気負いしなくて大丈夫だから。自分のやれることしよう。』

彼女たちは、強いから。と
気にかけてくれるのは、デビュー当時から
メンバーを見守ってるスタッフだった。

「はい、ありがとうございます。」

＊＊＊

少しして、彼女の雰囲気も
もちろんスタンバイしてたメンバーの雰囲気も変わっていた、

( ここまで切り替えられるのすごいな、)

顔つきも、凛とした表情のなかにある柔らかい雰囲気も、
さっきの、あの追い詰められてる彼女からは
想像もつかなかったから。

『曲スタート5分前です。』

見上げた空は、奇しくも晴天とは言えなかった。

だけど、きっとこれは
メンバーが、晴らしてくれる、そう思えた。

虹を、かけてくれる、

そう信じてやまなかった。

『曲スタートします！』

イヤモニに響く音、本番が始まる。

→