八 ページ8
「…分からないのかなあ、君には」
「…」
「君は、…私の気も知らずに」
独り言を言うように。子供を優しくあやすように。恋人に語りかけるように。誰かを誘惑するように。静かに内面を掠め取るように。
一体どれほどの意味が、彼の言葉に込められていたのだろう。低く、やや掠れた声が、鼓膜を撫でて逆立てる。一瞬、痛みすら忘れて仕舞うほどであった。何だろう、この感覚は。心臓を直接舐られるみたいな、…腹の底からにじみ出た言葉の残滓は、喉元に声が突っかかって形になることは無かった。
太宰さんは何も言わず、私の手を離した。軈て視線をふと此方に寄越したかと思うと、冷たい革靴の音をさせながら、部屋から退室した。
扉が閉まる音と同時に、へなへなと膝から崩れ落ちた。
久し振りに感じた『痛み』。彼の手が離れたとはいえ、まだ不快感が体のあちこちに残っていた。其れよりも、
「なに、いまの」
あの熱を帯びた視線。こわいろ。
あんな表情、初めて、見た。
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蓮ノ花 - 江羅古九さん、感想ありがとうございます!^_^はい、絵は自分で描きました!女の子の描き方ーみたいな本読みまくって描いた成果が出てたら良いんですけど笑笑 (2019年5月4日 21時) (レス) id: d96b011022 (このIDを非表示/違反報告)
江羅古九 - 文章の感じもそうですけど、絵が凄く上手いですね!!ご自分で書かれているんですか!? (2019年5月4日 21時) (レス) id: 651ad92b57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮ノ花 | 作成日時:2019年4月14日 2時