33.現実 ページ35
休憩コーナーの一角にあるテーブルにさっきコピーした紙を置いて、私と天宮はいすに腰掛けた。
私はコピー紙を手に取り、彼に、いや自分自身に聞かせるようにその内容を読み始める。
「慢性活動性EBウイルス感染症……通称CAEBVは、EBウイルスに感染したリンパ球の増殖が起きてしまうことによる病気……としかうまく説明できないわ。根本的には白血球の増殖性疾患と書いてあるけど……」
「俺にはさっぱりわからないよ」
「私もよ。この病気の日本でも発症例は年間数百名、知名度も低く、研究もあまり進んでないみたい」
「それで、どんな症状が出るとか書いてある?」
「ええ、発熱や急性咽頭炎、心筋炎……とても多いわ、脳炎や意識障害を引き起こすこともあるみたい。まだききたい」
正直私自身が、この後に続く膨大な症状を読み上げたくなかった。
「いや、聞きたくないかも……」
天宮の声も、さすがに暗くなっている。
「そうよね、しかもこのEBウイルスって、大人数の人が感染を経験していて、抗体を持っているらしいの。だからほとんどの人は発症しない」
「抗体って、ウイルスがきたらやっつけるやつ?」
私は彼の問いに相槌を打つ。
「そうね、だから珍しい病気なのかも」
まだコピー紙は残っている。この調子だともっと悪いことが書いてあるかもしれない。
でも、私達は知らなければならない。意を決して私は残りの紙に手をつけはじめた。
天宮はさっき私が読んだ紙を食い入るように見つめ、ため息をついている。
私がコピー紙を半分ほど読み進めていると、そこには衝撃的なことが書かれていた。
それを読み終えると、私の喉の奥がきゅっと締まるような、そんな感覚を覚えた。
でも読まないわけにはいかない。私は声を振り絞る。
「CAEBVは……最終的に……多臓器不全や……悪性リンパ種などの合併症を発症することで……」
天宮の手は震えているけど、しっかりとその大きな目は私を見ていた。
「高い致死率を……示している疾患である」
私と天宮の間に、冷たい空気が流れた。
「なんで、速水がそんな病気にかからなきゃいけないんだ……」
彼はそう言って下を向く。
「そうよね、なんでかしらね……神様もとんだイタズラをするものね…………」
お互い、この時は何か言葉を発さなければならないという衝動に駆られているようだった。
そうしないと、涙が溢れてしまうから。
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諸星夢月☆こみゅ行けません(プロフ) - 水の犬。さん» ありがとうございます!これからも少しずつですが更新していくのでよろしくお願いします(o^−^o) (2016年5月6日 6時) (レス) id: 222891f609 (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - 初めまして。久しぶりに更新されてて嬉しかったです! 更新、ゆっくりでもいいので頑張ってください(*・v・*)/ 無理はなさらずに。 (2016年5月5日 22時) (レス) id: 7c0259b150 (このIDを非表示/違反報告)
諸星夢月☆こみゅ行けません(プロフ) - himawariさん» そうなんですか!!嬉しいです!ありがとうございます(o^−^o) (2015年8月18日 21時) (携帯から) (レス) id: 8479091d1e (このIDを非表示/違反報告)
himawari(プロフ) - お誕生日おめでとうございます!!なんと私と誕生日一緒ですね!!びっくりしました!! (2015年8月18日 21時) (レス) id: faa47f7cf4 (このIDを非表示/違反報告)
諸星夢月☆こみゅ行けません(プロフ) - レイ@北欧領さん» ありがとうございます! (2015年8月17日 19時) (携帯から) (レス) id: 8479091d1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:諸星夢月 | 作成日時:2015年8月14日 12時