桜ん坊 ページ15
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よく晴れた午後の春、
店の前を
シルバーのボルボが停まって、
車内からお兄さんが颯爽と出てきた。
「こんにちは〜」
『こんにちは』
私は紳士精神を発揮して、店の扉を開け、
先にお兄さんを通そうとしたけれど、
優しく背中を押して店に入れてくださった。
『今日はお昼ご飯ですか？』
「そうなんですよ〜」
お兄さんはそう答えると、
いつものようにトレイとトングを持って
店内をくるりと一周する。
「今日のオススメってありますか？」
『ん〜。今日はミルクパンがオススメかな』
「じゃあこれとオニオンパンにしよう」
成形なしで焼くミルクパンは色んな形があって、
お兄さんは、その中でも一際四角いものを選んだ。
「あの、ここで食べてもいいですか？」
『いいですよ〜。ちょっと待っててくださいね』
レジ前の丸椅子を勧め、厨房でお湯を沸かし、
棚からチェリーコンサーブを見つけ、
冷蔵庫からはマカロニサラダを取り出す。
ミルクパンだけだと味が素朴なので、
つけて一緒に食べたらどうだろうと思ったのだ。
『お兄さん、このジャムぜひ使ってくださいな』
「わあ、ありがとうございます」
『残り物だけどマカロニサラダも。
ミルクパンにつけたら美味しいと思いますよ』
チェリーコンサーブを片手に持つお兄さんは、
興味津々に瓶の中身をずーっと眺めているので、
マカロニサラダはレジカウンターの上に置く。
厨房でヤカンがしゅんしゅん鳴っていた。
オーガニックの珈琲を淹れると、
香ばしい匂いが届いたみたいで、
｢ああ、いいですね｣と身を乗り出している。
『後味さっぱりしてるから飲みやすいと思います』
コトンと二つのカップをカウンターに置き、
少し遅めのお昼ご飯withお兄さんだ。
私は試作品のオレンジケーキとバターロールに
マカロニサラダを乗っけたものを食べることにした。
お兄さんは早速チェリーコンサーブの瓶の蓋を開けると、
二つに裂いたミルクパンにたっぷりかけた。
甘酸っぱいチェリーはぽろぽろと垂れながら
お兄さんの口に運ばれる。
『どうですか？』
私が問いかけると、
｢美味しいです〜｣
お兄さんは、ため息混じりに答えた。
すると今度はもう片方のパンに
マカロニサラダをかけて食べ、
幸せそうにフヤ〜っと笑う。
「あ、そうだ」
突然、頭の上に電球でも付いたように
名刺の束から一枚とって、何かを確認する。
〆
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あんず(プロフ) - なんか憧れるパン屋さんで、すごい行きたくなりました！、 (2018年6月2日 0時) (
レス) id: c19e297b48 (このIDを非表示/違反報告)
Eill Rie(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。メルさんの小さなパン屋さん、実際にあったら行ってみたいものです^^ (2018年5月21日 12時) (レス) id: 3073d54efc (このIDを非表示/違反報告)
早苗 - 名刺とお店の絵凄く可愛いです！！こんなお店があったら毎日行きたいですw (2018年5月12日 13時) (レス) id: 9d45fbd028 (このIDを非表示/違反報告)
早苗 - とても面白い作品で大好きです。これからも応援してます！ (2018年5月7日 22時) (レス) id: 9d45fbd028 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2018年4月29日 21時
