はちみつ色の日々 ２

＊ ページ30

.

「自分の気持ちの整理…、つーかなんつーか」


「気持ちの整理……？」




曖昧に言葉は濁しながらも
資料を抱えてた手には確実に触れてくるから
その感触にビクッとしてしまう。

体は小さいのに
男を感じちゃうこの手に何度もやられた経験がある。
ペンを持つ手、資料を持つ手、飲み会でジョッキを掲げてる手。
ずっと見てるだけだったそれに触れられて
パニックを起こしそうなくらい、動揺中。





「今日、二階堂と顔赤くして何話してた？」


「え？」


「ああいう顔、簡単に男に見せんなよ」


「ん？え……、あっ！」




あの時、視線を感じた時か！
いや、ていうかあれは
北山先輩のことで顔を赤くしてたんだけど…




「あと関口な。
飲み会の度にあいつに絡まれてさ
ちゃんと拒否らねぇからあいつだって調子のんだろ」


「はい……」




なんだかさっきから
まるで私にヤキモチでも妬いてるみたいな。

話の繋がりが全くないのもあって
何が言いたいのか分かんない。

けど…、
正直鈍い私でも勘づいてしまうこの雰囲気
期待せずにはいられないじゃん……？






「あの、それでその……、結局どういう…？」





ずっと触れられてた手に思わず力が入ってて
それに気付いたのか手のひらを優しく包み込んでくるから、余計分からなくなる。






「どういうことだと思う？」


「いやっ、だからそれを聞いて……━━━、


グッと腕を引かれてバランスを崩した私を
受け止めるようにした瞬間、すぐに先輩の唇が触れた。

目を閉じる隙もなく
目の前には先輩のお顔があって





「もう俺のもんだな」





ニヤッて意地悪に笑うその口角に
ゾクッとした。





「っ、///いや、ちょっ、」


「いや？」


「あっ、いや、そういう意味のいやじゃなくてっ」


「じゃあ、いいの？」





改めて、いいの？と言われても
恥ずかしくて下唇を噛みしめたら、微かにタバコの味がした。

それがまたキスしたんだって事実を思い出させて一人で熱くなってると
待ちきれない、とばかりに
今度はゆっくりとまるで獲物を狙うみたいに
唇に降りてくる視線と、熱。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す