泣き顔マニア

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「あ……、えっと、私とでいいんですか？」


「うん、Aちゃんとがいいの」


「はい……、じゃあ是非…」


「ふふ、やった♪
お店は私オススメの店ピックアップしておくね」




じゃああとでね、って裕太にも手をヒラヒラさせて
受付の方に行ってしまった遥さん。





「………何だろう、急に」




思わず裕太を前にして口にしてしまった言葉に
裕太も首を傾げて困ったように笑った。




「北山先輩のことかな？」


「……え？
遥さん、北山先輩と私の事知ってるの？」


「分かんないけど…それしかなくない？」




それしかないか、と言われればそれしかないかもしれないけど

もしかしたら………、




「裕太のこと、かもしれないし」


「え？おれ？」


「私が裕太のことを好きなのはバレてそうだから」


「あー……」


「裕太のことは諦めてっていわれるのかも」





なーんて。
こんなこと裕太に言うことじゃないのに
ついつい困らせたくて、幸せそうな裕太を見たくなくて
変なこと口走っちゃう。





「大丈夫っ、もう裕太のことは友達としか思ってないし。
それに、そうだったとしたら遥さんに愛されてる証拠じゃーん」




勢いよく肩を叩いてみるけど
そこをスリスリしながら終始、気まずそうな裕太。

今まで通りでいようね、って言ってきたのは裕太なのに
一生懸命がんばってる自分が馬鹿みたいじゃん……。





「嫌なら行かなくてもいいんだよ？」


「………え？」


「俺が気付いてないとでも思ってる？」




じっ…、と真ん丸な目で見つめられて
顔が熱くなる。

泣き腫らした目は化粧で隠したつもりだったけど
まぶたをペシっと優しく指ではじかれた。





「顔がぶさいくなってる」


「なっ……！」


「ごめんね」







………また謝る。

触れられた瞼に
ピーンと必死で張ってる糸が緩みそうで唇をかみ締めた。

私は謝られたいわけじゃないって
どうして伝わらないのかな。





「……違うよ、裕太のせいじゃないし。
自意識過剰っ」


「えっ？！」


「俺のせいで〜、とか思わないでよねっ。
これは嬉し涙だもん、超絶イケメンに言い寄られてさ、あまりにも嬉しくて」


「なにそれ、夢？」


「違うしっ、現実！」


「……………」


「……なによ、」






じとっ、て睨まれて
私も反抗的に睨み返すと
次の瞬間にはふにゃっと一気に顔が緩む裕太。

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