キラハグ ２

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そこから少しだけ沈黙になったけど
周りのお客さんの賑やかな声があって助かった。





「Aは？なんで藤ヶ谷といんの？
急にいるからビビったんだけど」


「………うん、」







やっぱそこだよね、そうなるよね。

でもなんで太輔さんといるのかと聞かれても
自分でもよくわからないから答えようがない。








「…………付き合ってんの？」







弱々しくなった声。

こんな場面で急に子犬みたいになられても
また私の胸が痛むだけじゃん……。






「まだ………」


「まだ？」


「ひろの家を出て行った日、太輔さんに会ったの。
早朝だっていうのに本当にたまたま。
あの日あの瞬間、太輔さんに会うなんて
偶然にしては出来過ぎてるっていうか、運命なのかなとか思ったりもして」


「そんで？」


「今、太輔さんのところでお世話になってる……」








これを聞いてひろはどう思うだろうか。

もう私なんてどうでもいいから何とも思わないのか
少しでも心を痛めてくれてるのか。

顔を見てしまったらそれを感じてしまいそうで
俯いたまま顔を上げられなかった。









「そっか……。」








ポツリと呟いた声は小さかったけど私の耳に届いた。








「藤ヶ谷、優しいだろ？」


「え？」


「あいつ優しいし
好きな女なら尚更すげぇ大事にするタイプだし」






俺には優しくないけど、って
冗談交じりに笑っていうから顔を上げると
今日初めてちゃんと目が合った気がした。

いつもの、しっかり相手を捉えてくれるひろの瞳と。









「Aがそう決めてそれが幸せって思うなら
ヒカリのことも俺んとこの仕事のことも気にしなくていいから」








…………私は何を期待してたんだろう。

きっと心の奥底では
今日こうして太輔さんと一緒にいる所をひろに見せることで
もしかしたら妬いてくれて、私を引き戻してくれるかもしれないと思ってた。

きっとそれを望んでた。





自分の本当の気持ちを伝えることもしないで
自分からひろを咲彩さんのところへ向かわせたくせに。

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