キラハグ ２

７８ 北山side ページ29

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「芦田さんっ！！」







仕事場のドアを勢いよく開けると
驚いた顔をした芦田さんがいた。








「芦田さんっ、Aは？！」


「え？」


「Aが………っ、」









朝起きると
"お世話になりました。"
と一言だけ書かれた紙が
テーブルに置かれていた。


そんで
そのままの勢いで仕事場まで探しに来たわけだけど、








「Aちゃんどうしたの？
いなくなったの？」


「いや……………、」









芦田さんを見て冷静になった。

昨日Aは、俺の"待ってて"って言葉に返事を返すことはなかった。

まさか朝っぱらからいなくなってるなんて思ってなかったけど。









「大丈夫？」


「あ…すんません。
つか今日昼過ぎまで来れないけど、大丈夫？」


「うん……、それは全然大丈夫だけど」


「じゃあよろしくお願いします」








咲彩に気を使ったのか
戻ってくるつもりもないのか。

でもあの手紙の内容からして
戻ってくるつもりもなさそうな気がする…。








部屋に戻るとまだヒカリはすやすや寝ていて
もう一度残された髪を見つめて、ため息をついた。









「勝手にいなくなんなよ………。」









でも俺は今すぐAを探しに行くことも出来ない。

咲彩とのこともきちんとしなくちゃいけないし
曖昧に引きずり続けてたのは自分のせいだ。








「お、ヒカリ起きたか〜？」









それでもやっぱり寂しいもんは寂しい。

朝ご飯の香りがしない朝も
ヒカリの可愛さを分かち合えない寂しさも

Aがいる毎日が当たり前になっていたからこそ
その当たり前が急になくなると
心にぽっかり穴が空いたような。









「寂しいなぁ〜…ヒカリ……」








咲彩とやり直すのが一番丸く収まるってのは
俺だってわかってる。

でも、Aの気持ちが分からない。

子供を抱えてる以上
無理やりにAを俺のものにするのも違う気がして。









抱き上げてるヒカリの顔も
心なしか元気がなさそうに見える。

こんな父親でごめん、って罪悪感から
強く強くヒカリをめいっぱい抱きしめてやった。

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