キラハグ ２

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「さ、遠慮なく入って入って」


「………お邪魔します……。」









そして今わたし
陽之助先生こと、太輔さんのお家へと侵入中。



どうしてこんな急展開になったのかというと………、





━━━遡ること一時間前。








「とりあえず実家に戻るか……。」






戻るべき場所は実家しかないわけだし
キャリーケース片手に家出少女ばりにフラフラと街を歩いていた。

なるべく何も考えないようにひたすら歩いていると、







「あれ？Aちゃん？」








聞き覚えのある声が聞こえて振り返ると
驚いた顔をした陽之助先生がいたのだ。








「……え、陽之助先生……？」


「やっぱりAちゃんだ、どうしたのこんな朝早くに」








もう日は上っていたけれど
まだまだ人通りも少ない早朝。

足を止めた私に近づいてくると
手にしてるキャリーケースを見つめた。









「家出？」


「あ、いや、あの…………、」







咄嗟にキャリーケースを後ろに隠すけど
もうきっと今更意味はない。








「そ、それより、陽之助先生こそ
こんな朝早くにどうしたんですか？」


「俺は仲間と飲んでて終電逃しちゃってさ〜
さっきまでカラオケいて、今から始発で帰るとこ」


「なるほど……」








意外にも随分若い飲み方してるなぁ、なんて思ったけど
ベロベロになってるわけでもなく
むしろいつも通りピシッとしてる端正なお顔なあたりは
さすが陽之助先生。









「一緒に来る？」


「え？！」









その言葉に驚いてる間に
後ろに隠していたキャリーケースをひょいっと奪われた。









「えっ、ちょっ、」


「何があったかは分かんないけど
とりあえず家おいで？
温かい飲み物でも出すよ」








鼻赤くなってるし、って鼻に触れられて。

こんな時にこんな偶然出会うなんて
有り得ないほどの確率だと思う。

だからこそ
これもまた運命なのかなぁ、なんて思ってしまって。









「…………はい。」









これが、私が陽之助先生のところにお邪魔するきっかけになった
数時間前の出来事。

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