嘘つきなキス

４０ 回想Ki ページ40

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歌姫あいりの加入で、バンド名を"RIPS"から"KISS"に改めた俺たちは、
俺と二階堂がギター、ベースは千賀、ドラムは宮田という体制で、新スタートを切った。

そして大学に上がると、本格的にライブハウスでの活動を始めた"KISS"。




手作りのビラやホームページ等で地道に宣伝したり
時々俺のアコースティックギターとあいりの声だけで路上ライブをしたりして
少しずつ少しずつ客を増やしていった俺たち。



でも音楽性というよりは、圧倒的にあいりの可愛さでファンがついたようなものだったけど、それでいいと思ってた。




ステージ上のあいりは別人だった。




ステージを降りれば、出会った頃と変わらない初心(うぶ)で、地味な女の子に戻ってしまうのに
ステージ上ではキュートで、コケティッシュで、エネルギッシュな歌姫に変貌する。



いつも後ろから見ていて
天性の歌姫なんだなと思い知らされる。



だから自分が歌わなくなっても
あいりの為に曲を書いてるのはすごく楽しかった。





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「蛹を歌いたい？」


あいりに突然言われて驚いた。


「あれは俺が自分で歌う用に昔書いたやつだからなぁ、
全然女の子が歌う曲っぽくないし」


「でも歌いたいの、あの曲すごい好きなの、
だから眠らせておきたくない。
歌詞は女の私だって共感できるし」



珍しく強く食い下がられて
そこまで言われたら、特に反対する理由もなかったから。
いいよ、って言ったら
思いっきりあいりに抱きつかれた。


それがまんまと功を奏する。


可愛い女の子がパワフルに男の歌詞を歌い上げることで
"KISS"は更にファンが増えていった。





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だけどずっと順風満帆だったわけじゃない。


大学２年の時、
千賀の父親が倒れ、家業を継がなければならないと突然千賀が脱退してしまう。

代わりに二階堂がベースを弾いていたが
やっぱりツインギターの迫力あるサウンドの方がいいという二階堂の意見に、宮田が連れてきたのが横尾さんだった。



宮田の大学の同級生だという横尾さんは
演奏技術は正直、アマチュアに毛が生えた程度だったけど、音楽作成のことや本気でデビューを目指すならストリートや対バン増やした方がいいなど、マネージャー的に裏で表で動いてくれたので、当時とても助かったのは事実だ。



そんな横尾さんが
俺の演奏ではデビュー出来ないから、と
連れてきたのが、









藤ヶ谷だった─────。

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