嘘つきなキス２ (ページ20)

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２０北山side ページ20

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そしてそれ以上に驚いたのが

あいりがソロシンガーとしてメジャーデビューするらしい、という噂があることだった。

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東京２daysは無事成功を収め、1週間後には関東周辺、更にその次の週は名古屋へと飛ぶ。

俺達のライブが非常に良かったという内容で小さなネット記事ではあるが、取り上げられたりもしたし、順調な滑り出しだった。

それでもどこか心が晴れないのは、横尾さんに聞いた話が尾を引きずっているからだ。

らしくない。

そう思いながらも、あんな話聞きたくなかったのにと溜め息が出る。
横尾さんもどうして今頃になってわざわざ。

"１年ぐらいで上手くいかなくなって互いに別々の道を進もうって"

"２人ともお前に罪悪感を抱きながらも音楽を手放すことができなくて"

"太輔は色んなソロの歌手のサポートミュージシャンをやってるよ、主にレコーディングとかライブハウスでだけど"

"あいりは音楽の勉強をしにアメリカへ渡ったって聞いた。今水面下でデビューに向けて動いてるっていう噂は聞いたけど"

なぁ、そんなすぐ別れるくらいならなんで。

なんで俺から簡単に離れていったんだよ、あいり。

俺達、めちゃくちゃ上手くいってたじゃん。
あんなにも毎日、笑って、抱き合って、キスをして。

いつだって互いの表現を、音楽を
共に尊敬し合い、確かめ合い、高め合って。

でも、

俺の語る夢に、俺の行き過ぎた野心に
お前は不安になって、心のバランスを崩したんだよな。

弱音も、泣き言も、俺じゃ聞いてくれないと思って藤ヶ谷を頼ったんだよな。

「って、もう過去のことだっつーの。
よこーさんが変なこと言うから思い出しちまったじゃん」

"あいりが薬飲んでんの、北山は知ってんの？"

"あいりの病名、パニック障害だって"

"不安で、不眠に悩まされてたの、お前まさかずっと知らなかったの？

初めて藤ヶ谷に胸ぐらを掴まれ、殴られた日。

それは皮肉にもメジャーデビューの日が決まった日だった─────。