18 北山side ページ18
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明日もライブを控えてるので、反省会と明日の打ち合わせを兼ねて、桜井さんとメンバー、それに数人のスタッフでご飯を食べに行くことになった。
真面目な話が終わり、場もくだけてきた頃、
俺の席の隣に座る玉森。
「ねぇ、ミツは会場にいたAのこと見つけた?」
「え?」
ドキッとした。
見たよって普通に返せば良かっただけなのに
何故か言葉に詰まってしまって。
「いや………来てたの?」
「うん、来てた。普通に自分でチケット取って。真ん中ぐらいだったかな、中央のバーにしがみついて一生懸命見てたよ──────
ミツのこと」
すぐに言葉を、返せなかった。
黙ったまま玉森の表情を伺えば
別に怒ってるわけでもなさそうで、飄々とした顔でウーロン茶を飲んでる。
「俺がいつ見てもミツのこと見てんだよね」
「たまたまだろ」
「ミツ、動揺してる?ミツって分かりやすいからな〜」
「あのな。お前ら上手くいってんだろ?」
「まぁ、それなりに?」
「ならいいじゃねーか。んなことよりさ、玉のデザインしたグッズ今日の分完売だってよ」
「まじ?!凄いね!」
玉森はきっと俺が話をはぐらかしたことは分かったのか、それ以上Aの話をしてくることはなかった。
二度とごめんだ
あんな想いは。
絶対に、もうメンバーを失いたくはない。
頭を振り、ジョッキをあおる俺の横顔を玉森がじっと見ていたことに
俺は気づかなかった。
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途中、俺は横尾さんを呼び出した。
横尾さんにもメジャーデビューを見据えたインディーズデビューの報告をしたかったから。
今の時代、レーベルの力を借りずとも、セルフプロデュースでも、売れる方法がないわけじゃない。
だけどやっぱり確かな資金源で準備して提供する音楽やパフォーマンスの質は、セルフプロデュースの比ではないと思い知らされた。
しかのインディーズと言ってもメジャーレーベルとパイプのある桜井さんの事務所は、数多くあるピンキリなインディーズレーベルの中ではトップクラス。
こんなにも恵まれてることはない。
だから
今度こそ
今度こそは期待に応えたい。
「ミツ、ちょっと一人で気負いすぎてない?」
「ん?どこが?」
「いや、なんか一人で色々と抱え込んでるように見えるからさ」
「考えすぎ。それにこれは気負いじゃなくて気合いだから」
笑い飛ばす俺に
横尾さんも苦笑いしながら俺の肩を叩いた。
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作者名:はちみつみゆ. ましろ | 作成日時:2020年1月9日 18時