姉さん、愛してる。【夏油傑】 (ページ7)

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「…姉さん？どうしたの、私の顔をそんなに見つめて」

神なんて存在しない、もう賽銭などやるものかと考えていれば、その考えに至らしめた本人である傑が私の顔を覗き込んでくる。普段は私が傑の顔を見上げるため、傑の顔が下にあるなんていうこの状況はとても珍しいものであった。なぜ下にあっても綺麗なんだ。うっ顔が眩しい。

『神なんていないんだなって』

「私の顔を見てそれを思ったの？思考回路がどうなっているのかとても気になるね」

『初詣はお賽銭あげない』

「まだ神トーク続いてたのか」

『傑って神様信じる派？信じない派？』

「…神は信じないけど、運命なら信じているよ」

意外だ。傑が運命を信じるなんて。何か理由でもあるのだろうか。もしかして好きな人がいるから、とか？

『へえ意外！運命とか信じるタイプなんだ。えなにもしかして好きな人との運命信じてるってこと？』

もし好きな人がいて、その好きな人と結ばれてくれたら姉離れしてくれるという期待と、少しの好奇心。きっと隠せてはいないだろうが、隠すことよりも知りたいと思う気持ちの方が断然大きかった。

「……好きな人。ふふ、どうだろうね？」

そう簡単には教えてくれないのが夏油傑という人間だ。だがこの声のトーン。間違いない。好きな人がいる。長年傑の姉を務めてきたと思っているのだ。分からないはずがない。どんな子なのだろう。きっととても可愛らしい子に違いない。傑が好きになる程の人。余っ程のクズでない限り、どんな子でも交際を認める。認めるというより、認めさせてもらうの方が正しいだろうか。なぜならその子は私にとっての救世主だからだ。姉離れをさせてくれてありがとう、これからも末永く末永く傑をよろしくと伝えたい。末永くを2度も言うのはとても大切な事だからである。

『相変わらずそういう事は教えてくれないよねぇ…。あ、私いちごにする』

先程からいちごかバナナかで脳内会議を繰り広げていたが、好きな人の話題が出たことにより一気に青春の甘酸っぱさが感じられ、いちごになった。

「急に決めるよね、姉さんは。それなら私はバナナにしようかな」

『え？でも』

傑はあまり甘いものが得意ではないはずなのに。

「いちごも食べたいから、少し分けてね。私のバナナもあげるから」

ニコニコと嘘くさい笑みを浮かべこちらを見てくる傑。優しさ故、なのだろうが謀ったなと思わざるを得ない笑みだ。小さい頃はあんなに可愛かったのに、どうしてこうなったんだ。