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これまで何度も計画し、何度も実行に移し、何度も失敗してきた。
初めて離れようと思ったのはもう4年も前のことだ。4年間、ずっと私は離れる努力をしてきた。
登校時間をずらそうとしたり、部屋に鍵をかけたり、委員会に入り下校を共にしないようにしたり、など。だがその度弟もまた私から離れないための計画を立てていた。どれだけ私と離れたくないんだ。
それだけでは無い、高校からは一人暮らしをしようとしていた。少しでも姉離れさせるために。だが両親からの反対と、傑の猛抗議により中止となった。
一生このままなのではないか、と少々焦りを覚えたのを鮮明に覚えているし、今も少し焦っている。嫌っている訳では無い。むしろ弟の事は両親と同様に愛している。だからこそ、好きな人と付き合って、結婚して、幸せになって欲しいのだ。
だから、この意志を曲げる訳には行かない。
そう決意を固めながら弟の背中を見て、外へ出るために靴を履く。まだ履き始めて1ヶ月ほどしか経っていない新しい靴だ。
「それじゃあ行こうか。忘れ物はないかい?」
『んーと…ない。傑は?』
「私もないよ。はい」
はい、と言われ差し出されたのは弟の手だ。傑は手を繋いで外を歩きたがる。おかげでカップルと間違われた。もうあんな恥ずかしい思いはしたくないし、姉離れのはじめの一歩にしたいという一心で言葉を放った。
『…今日はやめとかない?』
途端、空気が重くなる。どうやら失敗したらしい。
「どうして?今までだって手を繋いで行っていたじゃないか。…Aはそんなに私が嫌かい?」
昔の呼び方で私を呼ぶ傑。あぁこれは相当ショックを与えてしまったらしい。そういう時にしか、私のことを弟は名前で呼ばないのだ。
『…ううん、嫌じゃないよ。手、繋いで行こうか』
「……嫌じゃないなら、いいんだ。手を繋いで行こう。もう出ないと本当に遅刻してしまうよ」
ぱっといつもの表情に戻り、私の手を握る傑。良かった。元に戻ったみたいだ。少し焦りすぎたかもしれない。もっと慎重に行くべきだったと反省する。高校卒業まであと3年あるのだ。この3年をかけて、少しずつ少しずつ距離をとっていけばいい。正しい姉弟の距離まで離れられたらいいのだけれど。
「今日のお弁当には姉さんの好きな甘い玉子焼きも入っているから、楽しみにしててくれ」
『えっほんと?嬉しいありがとう好き』
…私も弟離れをしなくては。
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無名(プロフ) - 麗澪さん» ありがとうございます。頑張ります! (2021年10月29日 0時) (レス) id: a93a36c880 (このIDを非表示/違反報告)
麗澪(プロフ) - 応援してます。面白すぎ (2021年10月28日 17時) (レス) @page4 id: e60b29b16c (このIDを非表示/違反報告)
無名(プロフ) - 雪マカロンさん» 今作も読んでくださりありがとうございます!頑張って参ります! (2021年10月28日 9時) (レス) id: a93a36c880 (このIDを非表示/違反報告)
雪マカロン(プロフ) - 新作も最高です!更新頑張ってください! (2021年10月28日 7時) (レス) @page3 id: c9091179e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無名 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mumei02031/
作成日時:2021年10月28日 2時