chapter2-7 殺人鬼少年 ページ12
｢大丈夫だよ。町に出たところで面白いことなんて無いもの｣
過去に思いを馳せていたのを一瞬で現実に引き戻す。
これ以上人間を殺してはいけない。
朱羽という苗字の人間とは関わってはいけない。
既に1つは破ってしまっているけれど。
｢……なら、良いのですが｣
安心した様子で返される言葉に、少し落ち着かなかった心臓が安定した鼓動を取り戻した。
ほっと胸を撫で下ろす。
……その瞬間、町の方からアナウンスが響いた。
｢こ……地区……お住まいの、……か……ねリツカさんが行……不明に……｣
｢く……いパーカー…………のズボン……｣
｢ご……ょう力……願い……ま……｣
麓の町のアナウンスの言葉は、山奥の海刻家に正確に届くことはない。
だがアオイの中では、きちんと読める正しいであろう文章が出来上がっていた。
"この地区にお住まいの朱羽リツカさんが行方不明に"
"黒いパーカーに黒のズボン"
"ご協力お願いします"
聞き取れた部分だけだが、内容は充分理解出来る。
｢……葉音婆。今日の夕飯、いらないから｣
｢そんな急に……何処か具合でも？｣
｢いや、別に。｣
軽く上着を羽織って、"元"お父さんの書斎へ向かう。
葉音婆は暖炉の傍でいつの間に用意した紅茶を飲んでいる。
行くなら今だ。
｢お父さんの書斎……暫く近寄ることも無かったけど｣
ずらりと並ぶ分厚い本の中から1冊を選び、真ん中から開く。
ページの中央は器用に切り取られ、小さな鍵が埋め込まれていた。
｢……葉音婆には迷惑かけちゃうかな｣
鍵をポケットに入れ、少し離れた蔵へと走る。
｢ビンゴ。後もうちょっと……そう、後少し｣
古びた戸が音も立てずに開く。
入った瞬間にお目当ての物が目に付いた。
元々目を付けていたのは、海刻家の歴史を記した本。そこまで厚い訳では無いが、その1冊には何百年もの歴史が詰まっている。
パラパラとめくっていると、気になる話が幾つか出てくる。
本当はその本だけで良かったのだが、読んでいる最中、何故か隣に置いてあった対のアンティークナイフに目を惹かれた。
深海の様な蒼色と、鮮血の様な深紅。
｢これも持って行った方が良いか……｣
ページを捲るのをやめ、必要最低限の物が入ったバッグに本とナイフを詰め込み、蔵を抜け出す。
｢ごめんね葉音婆。俺、やっぱ欲に抗うとか無理かも｣
夕陽に照らされ、燃える様に赤く染まった山を駆けるアオイの背中もまた、鮮血を浴びた様な鮮やかな赤で彩られていた。
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無神氷狐龍(プロフ) - 黄桃さん» ありがとうございます！いえいえ…！黄桃さんのじゅじゅエッグの続き、凄く気になります(*´ω`*)黄桃さんも頑張ってくださいね！ (2021年1月15日 16時) (
レス) id: 8c5ca7a3be (このIDを非表示/違反報告)
黄桃(プロフ) - こういう物語好きです！神作作る作者さんは神か！？私の小説と比べると・・・・（。；_；。）応援してます (2021年1月15日 1時) (レス) id: 2f74b3d2f0 (このIDを非表示/違反報告)
無神氷狐龍(プロフ) - megumiさん» こちらこそコメント&読んでいただいてありがとうございます…！これからも少しづつ時間の許す限り更新していこうと思います。よろしくお願いします( *°ω°* ) (2021年1月9日 21時) (レス) id: 8c5ca7a3be (このIDを非表示/違反報告)
無神氷狐龍(プロフ) - テノヒラさん» なんと…！私自身も好きな子なのでそう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございます(´ω`) (2021年1月9日 21時) (レス) id: 8c5ca7a3be (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - 更新ありがとうございます！ いつもハラハラドキドキしながら、「次はどうなるのだろう？」と、拝読させて頂いてます。これからも、応援しています！ (2021年1月9日 20時) (レス) id: 1a15500b7d (このIDを非表示/違反報告)
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