第4話 上がって落ちる ページ5
*
結論から言うと有一郎くんは間に合わなかった。
だが無一郎くんは一命を取りとめ、今はお館様の産屋敷邸で療養中だ。
貴「……ごめんね…」
私がもっと早く足を運んでいれば有一郎くんも助かったかもしれないのに。
駆けつけた時、無一郎くんは有一郎くんの手を握って倒れていた。その2人の姿を思い出すと悔やんでも悔やみきれない。
有一郎くん、ごめんね。
いつも弟の無一郎くんを守るように私達を敵視していた優しい君を、私が死なせてしまった。
………私が、殺したんだ。
貴「ごめんね…無一郎くん……
…有一郎くん……ごめんね…」
身体中に包帯を巻かれ、血が滲んでいる痛々しい手をそっと優しく撫でる。
今日で無一郎くんが眠り続けて5日目だ。今日も起きないか…と立ち去ろうとすると私じゃない誰かの唸り声が聞こえた。
無「ん、ぅ……」
貴「むむむむむ無一郎くん!?」
無「……こ、こは…」
無一郎くんが目覚めた!!!
ぶわぁっと安堵の涙が零れて目の前がぼやぼやだ。
貴「よ、良かったよ〜!
無一郎くん目が覚めて良かった〜!!」
無「……むい…ち、ろ…?」
無一郎くんは自分の名前を口にした。
あぁ、嫌な予感がする。こういう嫌な予感っていうのは中々外れてくれないものだ。
無「だ、れ……それ…」
記憶喪失、だろうか。
それほどまでに兄の有一郎くんが死んだことがショックなのだろう。
罪悪感と嫌悪。
無一郎くんの静かな視線が私を責めたてるように見えて心臓を鷲掴みされたように早く、とても早く脈をうっていた。
貴「……うん、今は混乱してるみたいだね
ちょっと待ってて
お医者さんとお館様呼んでくるから」
今自分は笑えているだろうか。
逃げるように無一郎くんのそばを離れ、襖を閉じた。
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鬼滅大好きもち - 中学一年の私自身むいくんが最推しなのでこの小説を読んでると心がホワホワします。むいくんと恋仲が私的に思ってないので師範面から過ごす話の小説を探していてやっとお気に入りの小説に出会うことができました!とてもいい作品を作っていただきありがとうございます! (2019年12月27日 10時) (レス) id: 08fa144c19 (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 鬼滅隊じゃなくて鬼殺隊ではないでしょうか?間違いだったらごめんなさい。 (2019年11月17日 18時) (レス) id: f2976f8dda (このIDを非表示/違反報告)
時紀(プロフ) - 岬さん» ひぇ…恐縮です……私も岬さんから温かいコメントをいただけてキュンキュンが止まりません…ありがとうございます…… (2019年9月2日 15時) (レス) id: efc0380dc7 (このIDを非表示/違反報告)
岬 - わぁ……閑話めっちゃ……もう……囁かに甘くてキュンとしてしまいます……むいくんが柱になってからは、夢主さんに甘える機会が少なくなったように見えますし、こんなふうに甘えてるのを見るとキュンキュンが止まりません……ほんとに時紀さんの小説で、生きてます…… (2019年9月1日 21時) (レス) id: 7d9b2a2f36 (このIDを非表示/違反報告)
時紀(プロフ) - 李詩さん» 無一郎くん喋りましたねぇ、動きましたねぇ、かぁいかったですねぇ。作者もとっても幸せです。一緒にキュンキュンしましょう……! (2019年9月1日 0時) (レス) id: efc0380dc7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あたた | 作成日時:2019年7月23日 23時