030 余裕がなくて ページ30
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大貴side
大貴「じいちゃん、A知らない?」
祖父「んー?あぁ、夕方に出かけていったよ。夕飯までには帰ってくるって、」
大貴「でももう8時だよ?」
いつの間にか昼寝をしてしまった俺。目を覚ますと辺りは真っ暗で、とっくに夜になっていた。
家のどこを探してもAはいなくて、おまけにサンダルもない。じいちゃんは夕方から帰ってきてないって言うし、連絡しようにも彼女は………
大貴「ちょっと行ってくる!」
家を飛び出した俺は、とりあえず海まで走った。夜の砂浜は暗くて遠くまで見渡せないけど、端から端まで探し回ってもAの姿はない。ほかに行きそうなところなんて思い当たらないし。
まさか変な男に……、嫌な予感が頭を駆け巡って、じわりと冷や汗が滲む。それでも闇雲に探すしかない俺は、近くの通りをバタバタと走り回った。
そしてようやく姿が見えたのは、30分後。
大貴「A!」
「っ、」
近くのかき氷屋の店先で、店長の雄也さんとAが話しているのが見えた。雄也さんは、俺が小さい頃よく遊んでもらっていた近所のお兄ちゃん。でも、なんでこんなところに……
大貴「何してんだよ!心配すんだろ!」
「っ、」
咄嗟に声を荒らげてしまった俺に、ぴくっと肩を震わせたA。こんな顔させたいわけじゃないのに。不安で仕方なかった俺は、まだ余裕がなくて。
雄也「そんな怒んないでやってよ。頑張ってくれてたから。」
頑張ってくれてた?
何、どういうこと………?
雄也「店先でじーっとこれ見ててさ。欲しいの?って聞いたらうんって言うから、もう古いしあげるよって言ったんだけど。それは嫌だって頑なに断るからさ。」
ちょっと手伝ってもらったんだよ、って。
軒下でチリンチリンと風に揺れている風鈴を器用に外しながら、申し訳なさそうに雄也さんが笑った。
嘘……、
Aはこれが欲しくて、ここに?
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むぎ(プロフ) - まくるさん» ありがとうございます!大変なご時世だからこそ、少しでもみなさまの息抜きになればと思っています(^ ^) この新作もキュンキュンしていただけるように頑張ります。これから色んな展開が出てきますので、最後までよろしくお願いします☆ (2020年7月4日 19時) (レス) id: 88d801cec9 (このIDを非表示/違反報告)
まくる(プロフ) - 初コメント失礼します。新しい作品ですね、おめでとうございます!いつもキュンキュンしながらむぎさんの作品を拝見させて頂いております。こんなご時世で大変かもしれませんが、自分のペースでいいので更新頑張って下さいね♪ (2020年6月28日 18時) (レス) id: 968d5c61de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2020年6月28日 15時