015 どっかの国のお姫様 ページ15
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大貴「あ、おはよう。どこ行ってたの?」
「おはよう。うん、ちょっとね……お散歩?みたいな、」
来た道を戻ると、おうちの前の道路できょろきょろと辺りを見回す彼の姿があった。もしかして、探してくれてた……?
大貴「びっくりしたよ、いなくなっちゃったかと思った。」
「ごめんね、」
大貴「ふふ、いいよ。……夢じゃなかったから。」
………夢じゃなかった?
大貴くんが何気なく言ったその言葉が、妙に引っかかった。もしかしてあの日のことを言ってる?
なんて、もちろん問いかけることもできないまま。リョースケに会ったことは、なんとなく言えなかった。
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・
大貴「ほんとに何も持ってないんだね。スマホとか。」
「すまほ?」
大貴「……わ、かんないか。」
ふふっと笑われて、少しムッとする。
でも、意外にもあなたは勘のいい人みたい。
大貴「さてはA、お嬢様でしょ。」
「へっ、?」
大貴「当たり?」
してやったり、みたいな顔。
イタズラする子どものような無邪気さで、ニヤニヤとわたしを見つめてくるその眼差しは楽しそうで。
「ち、違うよ!」
大貴「嘘だ。ほんとはお嬢様なんでしょ。それとも、どっかの国のお姫様だったりして。」
「近い!」
大貴「ごめん。」
「もう……、」
ごめん、なんて言いながらクスクス笑ってる。
ぐいって近づいてきたからびっくりしちゃった。縁側で麦茶を飲みながらぼーっとお話するのも、彼となら楽しくて。こんなふうに意地悪されても、笑われても、ドキドキしてしまう。
大貴「だから色々わかんないんだ?」
「だから違うってば、」
本気で言ってるのか、冗談なのかわからないけど。そうだよね。わたしはもし正体がバレたとしても、彼にとっては『どっかの国のお姫様』で、どう頑張っても近づけない壁がある。こんなに近いのに、誰よりも遠い。それこそが苦しかった。
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むぎ(プロフ) - まくるさん» ありがとうございます!大変なご時世だからこそ、少しでもみなさまの息抜きになればと思っています(^ ^) この新作もキュンキュンしていただけるように頑張ります。これから色んな展開が出てきますので、最後までよろしくお願いします☆ (2020年7月4日 19時) (レス) id: 88d801cec9 (このIDを非表示/違反報告)
まくる(プロフ) - 初コメント失礼します。新しい作品ですね、おめでとうございます!いつもキュンキュンしながらむぎさんの作品を拝見させて頂いております。こんなご時世で大変かもしれませんが、自分のペースでいいので更新頑張って下さいね♪ (2020年6月28日 18時) (レス) id: 968d5c61de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2020年6月28日 15時