090 白雪姫 ページ41
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「………会いたい、ね」
彼に抱きしめられながら、耳元で呟く。
名取「……そうだな。ここまで、お前が大事に守ってくれた命だもんな。」
「………抱っこ、……したい、」
名取「うん。しよう。ここから運んでもらって、お前が元気になったら、いっぱいしてあげよう。」
ぽろぽろと、彼の目から涙がこぼれる。
大丈夫、大丈夫……そう言うように、お腹も撫でてくれる。ありがとう。撫でたかったんだ。ここに倒れてから、ずっと構ってあげられなかった。何度も何度も蹴ってくれてたのに。死んじゃだめだよ、頑張れ、って。わたしを励ましてくれていたのに。
よかったね。パパが撫でてくれたよ。元気なあなたに答えてくれたよ。こんなに泣いてるけど、ほんとは強い人だから。かっこよくて、優しくて、数えきれないほどの命を救う自慢のパパだから。安心して生まれてきてね。
もし、わたしが助からなくてもね。
名取「A、」
少しずつ瞼が重くなる。
それを察したように、少し体を起こして、彼がわたしに呼びかける。だけどもう、それに返事ができるほどの力がなくて。
名取「大丈夫、」
「………」
名取「ドクターが、愛する妻を助けられなくてどうすんだよ…っ、」
「………」
名取「俺が助ける。……絶対助けるから、」
彼の涙が、ぽたぽたとわたしの頬に零れて滲むのと同時に、瞼の隙間に差していた光が、だんだんぼやけていく。
そして、柔らかい手がわたしの後頭部をそっと持ち上げ、
名取「……………愛してるからな、」
なんて、日常で聞いたらクスリと笑ってしまいそうな言葉を。泣きながら耳元で呟いて、そっとキスをしてくれた。唇に感じた、忘れかけていた温もり。
まるでそれは、ストーリーの異なる白雪姫のように。彼のキスで、わたしは眠りについた。
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しゅあ(プロフ) - 初コメ失礼します!もうハッピーエンドで安心致しました。うるうるしながら最終的に号泣でお話読んでました!最後の救命メンバーからの一言には少しクスッとしてしまいました(笑)本当にこの作品作って下さりありがとうございました! (7月23日 0時) (レス) @page50 id: d9ff4faa7c (このIDを非表示/違反報告)
asumin110(プロフ) - 多分初めてコメントをすると思います!既に何回か読んでます!いつ読んでも感動しますし引き込まれます!山田先生も好きだったんじゃ…?って毎回思うのですがそこはもうそう思ってしまっていいのでしょうか(^ ^)?わら 続編書く気になりましたら楽しみにしています! (2022年5月22日 1時) (レス) @page50 id: 310d1e6e98 (このIDを非表示/違反報告)
う - 復帰するお話が見たい (2021年4月18日 2時) (レス) id: 5513b83dfa (このIDを非表示/違反報告)
知念菜々(プロフ) - 完結おめでとうございます!!続編で育休が明けて病院に復帰する話が見てみたいです! (2020年2月9日 16時) (レス) id: 70738b0893 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーか - 最後、なにがあっても幸せな形で終わる、です!誤字りました、、すいません、、 (2019年11月17日 23時) (レス) id: db28430fd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2019年1月19日 12時