スクラブ男子 2nd season (２)

080 目の前の命に向き合えるように ページ31

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名取side








トランシーバー越しに、岡本の決意が見えた。あの日の俺と同じ。こいつも一歩踏み出すんだ。









名取｢わかった。胸のカメラに手元を映してくれ。｣






岡本｢はい、｣









こちらも、岡本の手元が見られる簡易モニターの電源を入れる。すぐに立ち上がり、映し出されるAの傷口。

それと共に目に飛び込んでくる、生々しい光景。両足にのしかかる大きな瓦礫。これじゃあ当分は動かせないだろう。かなりのダメージを受けてるだろうし、退ける時も気をつけないと。









岡本｢ど、どこらへん……ですか、｣









メスを持つ岡本の手が小刻みに震えている。

モニター越しに伝う緊張感と、張り詰めた空気。このままだと焦ってミスをすることも考えられる。傷口を見るからに今はドクドクと出血しているわけではなさそう。岡本を落ち着かせるんだ。









名取｢ちょっと待て、落ち着け岡本。｣





岡本｢………、落ち着けないです…っ、｣









メスを手にした右手の甲を、左手で強く握って震えを止めようとしている。









名取｢ゆっくりでいい。何が一番怖い？｣






岡本｢………だって、だって…、Aちゃんの体には赤ちゃんがいる………、俺がミスしたら、止血どころかもっと出血して、もしかしたら、赤ちゃんだって…っ、｣









そういうことか。震える声で不安な気持ちをひとつひとつ言葉にしてくれた岡本に、下唇を噛み締めた。

やっぱり、こいつは優しい。Aだけじゃなく、お腹の子どものことも考えて、本当に助けられるのかって、頭がいっぱいなんだよな。こんなこと言わなくてもいいかもだけど、こいつが目の前の命に精一杯向き合えるように。









名取｢………よく聞け、岡本。｣









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