困惑 ページ21
「は……あ、えっ？……えっ？？」
突然飛び出した「好き」という言葉。
お世辞にもアカギさんの口から零れるような言葉ではない。
しかも、夏祭りのときやさっきみたく、からかって言うような──ぼんやりとした言葉ではなかった。
私に向けられた、確かな言葉。
とはいえ疑問形だったけれど。
──いやいや、それにしても。
ぐるぐると考えてしまって、結局私は思ったままの言葉を口にした。
「ど……どうしたんですか、いきなり……」
「天さんに聞いたところで分かりそうもない
ましてやオレ自身では分かるはずもない
アンタに聞くべきだ」
天さんに──……？
ふと思い出した。
そういえば、アカギさんがサポートしてくれた天さんとの一戦……何かそれらしいことを言っていたような。
「アンタ、オレに惚れてるんだろう？
ならオレの『これ』が何であるか、分かるはずだ」
そう言ってアカギさんはぽつぽつと話し始めた。
「はじめは──アンタにこれっぽっちも興味なんてなかった
町で出くわす物好きなお人好し、って程度……
けどアンタは違った
オレに興味を持つどころか、好きだなんて言ってきやがる
そもそもオレにはそれが分からなかった」
これっぽっちも興味がなかった、なんて言われてショックもいいところだ。
たぶんアカギさんはその言葉で私が若干のショックを受けていることすら分かってないだろう。
顔色ひとつ変わらない。
──まあいいんだけど。
「天さんと、石川さんと、ひろゆきとも問答をしたが──どうもオレはこういうのに疎いらしい
分からねえんだ、好きだの会いたいだの……
そんなもん、誰に対しても感じたことはないんだから」
結局石川さんにも漏れてたんだ……ってそんなことはどうでもいい。
アカギさんはゆっくりと煙を吐き出した。
「ただ……身体にまとわりつくような何か……
そんな感情はあった
それに……声が聞こえたんだ、Aさんの」
「声……？」
「アンタがこっちにいない間──ケンシュウリョコウ、ってやつ
誰もいないはずの暗闇で、アンタがオレを呼ぶ声がした……
振り返ったが、もちろん誰もいやしねえ」
そこまで言うと、自嘲気味に軽く笑ってみせる。
「……なあ、らしくねえだろう？
オレらしくない…………
この感情は、アンタのものと一緒なのかな……？」
……どき、どき、と心臓の鼓動が早くなるのが分かる。
アカギさんはそこまで言って、ふたたび鉄階段を降り始めた。
終わり
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南南東(プロフ) - 一気読してしまいました。アカギとのやり取りの一つ一つが素敵です!!更新待ってます！ (2022年5月11日 0時) (
レス) @page21 id: 74d17b21fe (このIDを非表示/違反報告)
唯 - 初めから最新話まで、一気に読んでしまいました!♪ アカギさん初め、他のキャラクター達の人物背景も崩れてなくて、展開もキュンキュンしたりして、本当に夢中で読んでいました。更新楽しみに待っています。最近は、冷え込む日も多いので、お体には気をつけて下さい。 (2020年1月20日 18時) (レス) id: a44ec662f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：戦犯にわか | 作成日時：2019年12月22日 21時
