34.ガッツポーズ ページ34
ゾムさんの言葉に、殴られたような衝撃を受ける。
そうだった、私はここでは一人の人間として扱われていない。
犬や猫のように扱われていることを考えるに、元の世界での彼らの扱いを考えれば嫌な答えに辿り着く。
「んっふふ、いっぱいあわあわにしよな〜！」
楽しそうに私を振り回すゾムさんに抵抗することも忘れて、私は呆然としていた。
どうしようか。
入浴の機会を逃すだなんて、そんな惜しいことはしたくない。
それに、今回を回避したところで、そう何度も避けることではないだろう。
でも、観念するというのは簡単ではない。そう簡単には割り切れない。割り切りたくない。
「ゾム。お前とは一緒に入らないから」
ゾムさんを制止したその声はひとらんさんのものだ。
「なんで。お前には渡さへんぞ」
ひとらんさんにまで敵意を向いて警戒するゾムさんに、ひとらんさんは短くため息をついた。
「そうじゃなくて、Aのお風呂は侍女に任せるんだよ」
その言葉に、ガッツポーズを決めたのは私。対して抗議の声を上げたのはゾムさんだった。
「はぁ！？俺が一緒に入ったるって言うてるやん！邪魔すんなや！」
こうなってしまえば、私とゾムさんは相入れない。
どうにかしてゾムさんの腕を抜けようとすれば、案外簡単に抜け出せてしまった。ひとらんさんに噛み付いているおかげで気が逸れていたようだ。
「だーかーら。だめなの。ニンゲンってさ、基本裸体を晒さないの。異性相手には特に。それは種族がどうとか関係ないの。わかる？」
ひとらんさんの説明口調に、ゾムさんは勢いを失った模様。
「で、でも…」と歯切れの悪い反論をしようとしたところで「何？」と気圧されてしまっている。
ゾムさんには申し訳ないが、ひとらんさんに密かに拍手を送った。
そして、この世界のよくわからない常識にも少しばかり感謝をした。人間の尊厳を守ってくれているようで何よりだ。
「Aは侍女に任せる。覚えれば一人で入れるはずだから、数日のうちだけだけど。いいね？」
ゾムさん初め、その場の皆さんからの異論はなさそうだ。もちろん私も。
ひとらんさんは“人間“に対して博識らしい。昼間、動物たちを世話していたこともあって、そういう方面に詳しいのかもしれない。
「はいじゃあ解散」
2021.12.23
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ムチャ(プロフ) - 名無しさんさん» コメントありがとうございます。フィクションだから楽しめる設定ですよね…！ (2022年1月31日 20時) (
レス) id: 5c3af31097 (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん - 少し怖い設定ですね…もし自分がこうなったらと考えると鳥肌が立ちます（褒めてます） (2022年1月26日 15時) (レス) id: 77d1f025e2 (このIDを非表示/違反報告)
ムチャ(プロフ) - カンナフューラー・スカーレットさん» コメントありがとうございます！今後の展開の参考にさせていただきます…！引き続き頑張りますのでよろしくお願いいたします〜！ (2022年1月24日 20時) (レス) id: 33a1921985 (このIDを非表示/違反報告)
カンナフューラー・スカーレット(プロフ) - めっちゃこの作品好きです！後下がリクしてるので私もいいですかね？受け付けてなかったら無視してくれて構いません夢主がピアノ弾いてみんながそれを聴いてびっくりするとかどうでしょう！trigger弾いたりしたら面白いと思います！これからも投稿頑張ってください！ (2022年1月23日 17時) (レス) id: ac012606e8 (このIDを非表示/違反報告)
ムチャ(プロフ) - ぽっぷこーんさん» コメントありがとうございます。上手く盛り込めるかわかりませんが、今後の参考にさせていただきます…！引き続き頑張ります！ (2022年1月20日 23時) (レス) id: 5c3af31097 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ムチャ | 作成日時：2021年11月4日 21時
