【wrwrd】俺らの可愛いニンゲンちゃん

4.私の名前は ページ4

「まあでも、こんなに慣れてるってことは、どこかで飼われてたんじゃないっすかね」

ひとしきり楽しんだあと、ショッピさんは真面目な顔で言った。
彼らの会話では、私はまるで犬が猫のような扱いだ。

「そんなん知らん。俺が拾ったから、もう俺のもんやもん。なー？」

言いながら、私に向かって首を傾げたゾムさん。
なー？と言われても、そもそも私は誰のものだったこともない。
人間が"飼われる"なんてことがそもそもありえないのに。

「飼い主が探しにでも来たらどうするんですか？」

「そんときは逃げる」

清々しいほどに盗人の発想だ。
まあ、幸いなのか、私を探しに来る人は存在しない訳だが。

「そや！名前つけたろ！どんな名前がええかな〜」

「自分のものにする気満々や…まあ、可愛い名前がいいっすね」

「なになに、なんの話？」

突然増えた声に肩が跳ねた。

その声は、私の真上から降ってきた。
驚いて振り返れば、そこにはニット帽を被った人がニコニコとして立っていた。

「げっ…シャオロンやん。マジかー……」

「なんか楽しそうやん。俺も混ーぜーて！」

ニコニコ…いや、ニヤニヤとしてゾムさんの肩をバシバシと叩いている。
その目が、ふとこちらを捉えた。

「うわっ、ニンゲンやん！どうしたん、この子」

「拾ったんすよ、庭で」

「へ〜〜野良ニンゲン…にしちゃ綺麗やな。迷いニンゲンか？」

まじまじとこちらを見る目に悪意は感じられない。が、しかし、爛々と輝くそれはどうにもいやな感じがする。

「この子の名前の話してたん？俺も考えよ〜！」

「しっかり聞いてたなコイツ…！絶対ロクな案出さんやろ…」

「そんなことないですよ、ゾムサンッ！」

随分と楽しそうなシャオロンさんと、押されているゾムさん。
さっきまでゾムさんのやりたい放題だったのが、シャオロンさんの登場で風向きが変わったようだ。

「う〜ん、ニンゲンやしな…太郎とか？」

『ベタすぎない？』

「それはベタすぎるやろ」

なんと、ここにきてゾムさんに言葉が通じた。…わけではないが、考えることは同じらしい。
この世界にも人間の"ベタ"は存在しているみたいだ。

「それに、この子女の子っすよ」

「あれ？そーなん？じゃあ花子かぁ…」

「それは絶対に却下」

勝手に盛り上がっているが、そもそも私には人生を共にしてきた名前がある。

『あの、私の名前は…』

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