夢寐 Ⅲ (ページ49)

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「泣き止んでよかったわ」

安心した光成の表情に
自分の顔を触ると驚いたせいか
いつの間にか止まっていた涙
“え？好きだったって言葉は嘘？”とあたふたしていると
“嘘じゃないよ”と今度はケラケラ笑いながら言う光成

「自分の気持ちに気づいたときはもうAは竜生と付き合ってたしね。
　今は、Aのこと世話の焼ける女友達だと思ってるよ。」

「なんか…ごめん」

「いや謝んないで。俺さ竜生といて笑ってるAが1番好きなんだよね。
　それに気づいたから諦められたんだから。」

“だから、また竜生の隣で笑っててほしいんだよね”と
今度は切なそうな顔をする光成
今日は一段と表情がコロコロ変わる

「戻れるかな？元に」

「大丈夫。きっと戻れるから。
　でもちゃんとAの言葉で言うんだよ？
　何が嫌なのか、どうして欲しいのか
　言葉にしないと伝わるものも伝わらないからね。」

「…頑張る」

“いいこ”なんて言いながら
私の頭をひと撫ですると立ち上がる光成

「竜生、教室にいるから行ってあげて？」

「え？」

「追いかける前に、竜生に“帰ったらただじゃおかない”って言っといたから」

おどけたように笑った光成は
“じゃ、俺、帰るから頑張れよ”と言い残し
屋上を後にした