夢寐 Ⅲ (ページ44)

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お風呂から上がったおりちゃんは
手にドライヤーを持って私の前へくると
“乾かして？“と言いたげな目で見つめてくる

仕方がないなとドライヤーを受け取ると
おりちゃんを座らせ濡れた髪にドライヤーを当て
手で髪を触りながら乾かしていく
よほど気持ちがいいのか目を瞑り口角が上がってて
そんな姿が可愛くて見えないことをいいことに
顔がニヤついてしまった

髪が乾かし終わりドライヤーを置くと
立ち上がりソファーに座る私を見つめると
静かに今度は向き合うように膝の上乗ってきて
ギューっと抱きしめたかと思えば
私の肩に顔を埋めたり擦り付いてきたりを繰り返している

「ちょ…おりちゃんくすぐったいよ。」

『違う。おりちゃんやだ』

“鈍感A”と呟きながら頬を膨らませるから
“なんでおりちゃんが嫌なの？教えてよ“とお願いすると
ちょっと恥ずかしそうにしながら

『“おりちゃん“ばっかりで、名前で呼んでくれないんだもん』

なんて可愛すぎる発言をされた
なんだそんなことかと“ふふっ”と笑い

「尚大」

と彼の名前を呼ぶと嬉しそうな表情

『Aに気づいてほしかったのに
　全然気づかないの鈍感すぎるよ。察してよ』

ようやく尚大と呼ばれて満足したのか
自分からかまってちゃんな発言をする
尚大くんが愛おしてく堪らなくて

「尚大くんおいで？ギューしてあげる！」

そう言って腕を広げると
今度はヤダヤダと駄々を捏ね始める

「さっきまでは甘えてきたくせに」

『名前で呼んでくれたから満足したの』

「今度からは言われなくても察せるようにするね？」

『Aは鈍感だから無理かもね』

憎まれ口を叩いたり
甘えてきたり
急に拗ねたり
私の気まぐれで猫みたいだけど
そんな彼に振り回される休日も悪くはない

『名前で呼んで』

fin