夢寐 Ⅲ (ページ25)

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それからお酒は進み大分酔いが回ってきたのか
光輝くんに先ほどのことを自然と口にしてしまっていた

『Aちゃん、辛かったでしょ』

悲しそうな目をしながら言葉を掛けてくれる光輝くんに
お酒の勢いは怖いもので不謹慎ながら甘えてしまいたくなる

「どこか遠くへ行っちゃいたいな…」

狭いこの町で
あの元彼と後輩と会うかも
しれない環境で暮らすのは正直嫌で
行く当てもないのに冗談で言うと
光輝くんから意外な言葉が返ってきた

『じゃあ、俺と暮らす？』

光輝くんの言葉で一気に酔いが覚める

「何言ってるの？…冗談でしょ？」

『冗談じゃない。俺、都内に就職することになったんだ。
　だから春にはこの街を出る。もしAちゃんがよかったら一緒に行こう？』

今年の春に大学を卒業する光輝くんは
去年から就活してて今日は内定が取れたことを報告するために
私の家を訪ねてきたのだった

光輝くんの申し出は嬉しいけど
家族でも恋人でもない私たちが一緒に暮らすなんて
出来るわけないと断ろうとすると

『俺、ずっとAちゃんのこと好きだったんだ。
　Aちゃんが俺のことそういう目で見てないのは知ってる。
　けど、一緒に暮らしてたら意識も変わるかも知れないし、
　もちろん好きになってくれたら嬉しいけどね。』

まさかの告白で驚きが隠せないでいると
“やっぱり気づいてなかったんだ“と少し寂しそうな顔をする光輝くん
“Aちゃんに何するかわからないから俺、帰るね”といい立ち上がると
玄関へ向かう途中に立ち止まり振り返った

『Aちゃん、一緒に暮らす話、考えといて？』

そんな言葉を残して光輝くんは街へと消えていった