いっそ嫌いと言ってくれ 【土方十四郎】

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＿＿気が付いた時、私はテーブルに突っ伏していた。
どうやら眠っていたらしい。横には恐らく殴られたであろう、鼻血を垂れ流し気絶している局長と空になった焼酎の瓶を抱えて眠り転けるお妙ちゃんの姿があった。


騒がしい店内。強い照明の光に目が眩む。
そうだ...局長達に連れられてキャバクラに来ていたんだっけ。


身体が重い、視界がくらくらする。そういえば自棄になって呑みまくった様な...弱いのに一気に何杯も煽るからだ。
相変わらず副長の姿はない 。他の席へ連れて行かれたのか、それとも先に帰ってしまったのか。

 

「別にどうでもいいけど...あんなひと、」



不意に女性に絡まれている光景が蘇ってきて無性にイライラが募る。性懲りもなくグラスに残ったカシスオレンジを一気に喉へ流し込むと、再び身体が熱を帯びた。

...お手洗い、借りようかな。

若干吐き気を催しつつ徐ろに立ち上がれば、貧血でも起こしたのか視界が一気に暗転した。



「っとぉ、大丈夫かい」
 
「...すいませ、」
 

 
厠から出て来たであろう男性にぶつかり、衝撃でよろめいて壁に凭れる。
間延びした声。顔を上げれば覚束ない足でふらりふらりと此方に近付いて来るのが見えた。



 「ありゃァ？ねーちゃん見ねェ面だな、新入りの娘かぃ？」



私を此処の従業員だと勘違いしているのか。まるで品定めでもする様に下品な顔を近付け、此方をじっと覗き込んでくる。
何なんだこの人...吐いた息が余りにもアルコール臭くて思わず鼻を摘んだのは許して貰いたい。

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