いっそ嫌いと言ってくれ 【土方十四郎】

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日付を跨ぎ屯所内も静けさに包まれた頃、寝支度を終えた私は副長室を訪れていた。
失礼します、返事も聞かずに襖を開けると目当ての人物は縁側に腰掛けていた。傍らには徳利とお猪口。昨日はあまり呑めなかったみたいだから一人で呑み直しているのだろうか。



「何度も言ってんだろ、その格好で屯所うろつくなって」

「善処します」

「次は切腹だからな」



副長は私が寝巻きのまま部屋の外を出歩くのをやたら咎める。無防備だとか危機意識が足りないとか襲われたらどうすんだとか、普段子供扱いする癖にこういう時だけ女の自覚を持てとか言う。私だって副長以外の前でこんな隙だらけの格好するつもりはない、それだけ気を許してるってだけ。

...そもそも、貴方にならいつだって手を出されても構わないのに 。

お付き合いがしたいなんて贅沢は言わない。身も心も汚れてしまった自分を求めてくれるなら、たった1回でもどんな形であっても構わない。優しいこの人に抱かれる日など永遠にやってこないことは分かってる、けれど。



「...今日、何してた」



副長は遠くを見つめたまま呟く。

長いと思っていた休日はあっという間に終わってしまった。一時期話題になったえいりあん映画の続編を観たり、ゲームセンターでUFOキャッチャーに挑んだり...気を紛らわせようとしてくれたのだろう、万事屋の旦那と過ごした久しぶりの非番は決して悪いものではなかった。



「あんな万年金欠の腐れ天パがいいのかテメーは。趣味悪すぎんだろ」

「非番の日に何しようが私の勝手でしょう。それに、意外とスマートにエスコートしてくれましたし」



驚いた...どうして知っているんだろう。そのままあの男に嫉妬でもなんでもしてくれればいいのに。今日もきっと、私の想いはこの人に届かない。

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