廿漆、『虎穴に入らずんば』 ページ27
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は〜〜〜お通夜。今日誰か死にました?ってくらい静か。誰も死んでないですよね。みんなピンピンしてますよね。
どうして誰も喋ってくれないの。
無言のまま夕食を食べる。勿論会話なんてない。善逸くんが来る前もあまり会話は無かったが、それでも、ねえ?雰囲気死んだ?って感じである。お焼香のやり方忘れちゃったよもう。
私が作った料理に箸を付ける男性陣の様子をじっと観察する。
やはりというか、慈悟郎さんと獪岳くんの作法は完璧である。獪岳くんは慈悟郎さんに扱かれただけあって、昔より遥かに行儀が良くなった。小さい頃は箸の持ち方とか凄かったんだけどね。
問題は善逸くんである。
彼は孤児だと言われていた。恐らく幼い頃に親に捨てられたからか、まあ当たり前だと思うが全く作法がなっちゃいない。
箸の持ち方違うぞ〜とかお茶碗の持ち方そうじゃないぞ〜とか色々言いたいが、まあ……そういったのは慈悟郎さんに任せれば良いかと南瓜の煮付けを口に入れる。……うん、良い味。
そしてふと気付いた、善逸くんのほっぺにご飯粒が付いている。
やだ、待って可愛い……!!そういうの本当好きなんだけど私。「お弁当持って何処行くの?」とか聞きたいがこれは年代がバレる可能性があるのでお口はミッフィーにしとく。
取りたい。「ほっぺにご飯粒付いてるゾッ☆」と言って取ってあげたい。そしてそれを目の前で食べて、頬を赤く染める彼にばちこん☆とウィンクを決めたい。
願望が爆発して滅茶苦茶気持ち悪い女になってるが許してほしい。夢見る系乙女(笑)なので勘弁してほしい。
……とまあ、ふざけるのも止めて普通に指摘してあげよう。
「善逸くん、右頬に米粒付いてるよ」と言ってあげれば、彼は「えっウソ」と言いながら指で探り、そして見つけた途端えへへ、とはにかんだ笑顔を浮かべる。あ〜〜〜このパターンも良いな。可愛かった。はなまるはなまる。
「………おい」
「え?どうしたのお兄ちゃ、」
いつの間にか目の前にいた獪岳くんに思わず吃驚するも、彼は気にした様子もなく手を伸ばし。
私の左頬に触れ、ちょい、と何かを摘んだ。
米粒。
「お前も付けてんじゃねえよ」
そう言って、ぱくり、と食べた。
暫し静寂が訪れる。無言の間、今の光景を脳裏でもう一度蘇らせた。
「……………ごめんなさい」
顔を両手で押さえ、熱くなった頰を隠すように呟けば鼻で笑われたような気がした。
すごくハズカシイ。
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桟鈬(プロフ) - コメ失礼します!メチャクチャ好きです!!(唐突)更新頑張ってください! (2020年11月2日 17時) (レス) id: a8b4b5bef5 (このIDを非表示/違反報告)
葵羽(プロフ) - 獪岳の存在が気になりはじめたのはぱんこさんのおかげです!更新楽しみにまってます!応援してます! (2020年3月23日 17時) (レス) id: bccf6ec4c9 (このIDを非表示/違反報告)
零華 - 初コメ失礼します!!。最&高のウィンウィンです!!(何いってんだろうか)更新再開するのを楽しみにしています!!。(*^^*)ガンバレ! (2020年3月18日 7時) (レス) id: f56491ae0c (このIDを非表示/違反報告)
アムネ(プロフ) - すごく面白いです。続きが気になります!更新再開するのを願ってます。 (2020年1月8日 19時) (レス) id: 9a6a9cf4a1 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - めっちゃ好きです!頑張ってください! (2020年1月3日 15時) (レス) id: 57c609d2c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱんこ | 作成日時:2019年10月16日 16時