金髪君に散々貢いで貰ってたら、いつの間にか形成逆転されかけた話。【鬼滅の刃】

丗伍、『この瞬間を』 ページ36

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そりゃ居るわな。
逆にあの子が約束すっぽかしてたら人間不信になるところだったわ。

何食わぬ顔をして、私はゆっくり足を進める。



善逸君は俯いている。表情は見えない。
片手が緋毛氈の上に置かれていて、硬く握り締めていた。

……今の彼はどんな心情なのだろうかって、カラスの気持ちすら分からない私が分かる筈も無いので早々に思考を放棄した。



彼の近くまで来た。手を伸ばせば届く距離。
然し然りとて特にアクションを起こす事なく、私はさり気無く彼の隣に立ち、腰を下ろす。



「………」

「………」

「………」

「………」



…………あっ、これ私待ちか。

彼は俯いたままピクリとも動かない。彼ならば、私が来たって事は遠くの距離から気付いてる筈なのに。

何かを待つように、ジッと地面を見つめている。



流石に焦らす真似はしない。
ちょっとだけ時間を置いて、頭の中を整頓したかっただけだ。



夕焼け色に染まった空を見上げながら、静かに手を伸ばした。
彼が握る拳に、私の手が触れる。





「善逸君」





彼の拳が硬く握られた。
やはり彼はこちらを見ようとしない。

そんな様子をまるで素知らぬ振りをするかのように、私は空を見上げたまま口を開く。



夕日が山の奥へ消えようとしている。





「………今夜、空いてるよ」





彼の手に被せるように、包み込むように、緩く手を握った。



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