近捌、『不易な選択』 ページ43
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ぽつり、ぽつりと小雨が降ってきた。
地面に黒の点が、やがて辺り一面に広がってゆく。
雨が降ってきた。
下を見ていた私の肩に、そっと彼の羽織がかけられる。
「ちょっと雨宿りしようか」
善逸君の言葉にこくりと頷く。
確かに、お金がぬれるのはとってもまずいよね。
「……!善逸君、あそこ雨傘売ってる」
「えっほんと?」
ぴ、と私が指差す方向に、寂れた店。商品である雨傘が立て掛けてあった。
名前が「店」から始まるなんて珍しい……あ、違うか、この時代は右から読むんだった、でも難しい字なので読めない。ここに来て漢字の勉強とかしんどいわ。
雨足が強くなる前に、ウンチャラ店(名前分からん)に入った。中は割と広い。
暗い店の奥から不意に「いらっしゃい」と嗄れた声が聞こえた。
滅茶苦茶びびって「ヒャッ」と女子力の欠片も無い声を上げて、咄嗟に善逸君の腕にしがみ付いた。彼もまあまあ吃驚したようにビクッと肩を揺らしていた。私の所為だよなこれ、誠に済まんな善逸君。でも声を上げなかったのは素直に凄いと思ったよ。
あとお婆ちゃん、出現の仕方が普通に怖いんだけど。「ひぇっひぇっひぇっ」って、その笑い方誰を意識してるの?ヘルメ○ポ?
「と、取り敢えずAちゃん。どれが良い?」
「えっ、あー………何でも良いよ。君のお好みでどうぞ」
「好み……うーん、じゃあ何色が好き?」
「好き?」
「うん。好き」
「善逸君」
「えっ」
「善逸君。と、月と、カラス」
「えっ」
「みんな大切。………みんな好き」
……やっぱり選べないわ。
優柔不断でごめんね。
そして物凄く単純な女で、ごめんね。
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葵羽〜best friend group〜(プロフ) - 善逸の誕生日ということで、「善逸君はぴば!」のお話を見にきました…何回読んでも面白い…凄く好きです…! (2020年9月3日 14時) (レス) id: bccf6ec4c9 (このIDを非表示/違反報告)
聖 - 面白いです!更新頑張ってください! (2019年9月17日 20時) (レス) id: 5aaa39b99e (このIDを非表示/違反報告)
もこ - とてもすき! (2019年9月17日 12時) (レス) id: fcbb1370f0 (このIDを非表示/違反報告)
まえむ - え、鴉かっけぇ…続きが気になりすぎます!!!更新頑張ってください!! (2019年9月17日 1時) (レス) id: 572cac2bfb (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 更新ありがとうございます!何だかハラハラする展開…!続きも気になります(o>ω<o) (2019年9月15日 5時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱんこ | 作成日時:2019年9月1日 11時