近陸、『貴方とともに』 ページ41
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「カラス、からす、お前」
「カァァーーッ泣クナ!!!ミットモネェ!!早ク行ケーッ!!」
頭をツンツン突かれた。いたい。涙が出てきた。
「…………ごめん、有難う、カラス……行く。私行くよ」
目を擦り、机の上に着陸したカラスを見てハッキリとそう言えば、カラスは真っ黒な翼を広げた。
「早ク行ッチマエ!!二度ト帰ッテ来ルナ!!」
「………うん、さよなら、カラス」
ほんと、口悪いよなぁ。
風呂敷を持って、私はもう一度「さよなら」と呟き、玄関へ向かう。
もう振り返らない。
情けなく、惨めったらしくアイツにしがみ付きはしない。
「………今度コソ、幸セニナレヨ!!」
____何度もこんな私を救けてくれてありがとう、カラス。
涙をひとつぶ零して、私は玄関を抜けた。
町並み。人が通り過ぎる。
ゆっくり歩く私を訝しげ見て、それでも何かを言う事もなく彼らは歩いて行く。
気にしない。私の気持ちは変わらない。君の元に、唯。早く行きたかった。
抱えた風呂敷が、がさりと揺れる。
「Aちゃん」
私を呼ぶ声が聞こえた。
一瞬足が止まった。でも立ち止まらず、そのまま歩いて行く。
ぼやけた視界の中、映るは綺麗な金色。
彼は私を待っていた。あの縁台の側で。
「………待っててくれて有難う、善逸君」
そう言って、微笑んだ。
彼は黙って私に近付き、ぎゅっと抱き締めた。
「これ以外、ぜんぶ置いてきた。私、振りかえらずにきたよ」
彼の肩に顔を押し付け洩らすように呟く。
「絶対、幸せにするから」
どうか、離さないで。
背に回した手を、縋るように握りしめた。
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葵羽〜best friend group〜(プロフ) - 善逸の誕生日ということで、「善逸君はぴば!」のお話を見にきました…何回読んでも面白い…凄く好きです…! (2020年9月3日 14時) (レス) id: bccf6ec4c9 (このIDを非表示/違反報告)
聖 - 面白いです!更新頑張ってください! (2019年9月17日 20時) (レス) id: 5aaa39b99e (このIDを非表示/違反報告)
もこ - とてもすき! (2019年9月17日 12時) (レス) id: fcbb1370f0 (このIDを非表示/違反報告)
まえむ - え、鴉かっけぇ…続きが気になりすぎます!!!更新頑張ってください!! (2019年9月17日 1時) (レス) id: 572cac2bfb (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 更新ありがとうございます!何だかハラハラする展開…!続きも気になります(o>ω<o) (2019年9月15日 5時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱんこ | 作成日時:2019年9月1日 11時