卌漆、『嘘吐き』 ページ3
.
…………寝てんの?起きてんの?
固く閉ざされた彼の目を見つめる。完全に目を瞑った状態で、何故私の手を握っている?
「善逸君?」
「何処へ行くの」
「………厠に。お花摘みだよ」
「………」
「手、離して?」
「君は俺を置いて何処へ消えようとしてるの」
…………聞いてたのかよ、おい。厠だっつってんだろ。言ったよね私。
まあ厠なんて嘘だけど。お金持ってトンズラしようとしてるクソ女ですけど。
「厠に行くだけだよ。起こしちゃってごめんね、善逸く」
後ろを向いたその瞬間、視界がぐるりと回転した。
戸を見ていた筈なのに、眼前に善逸君の顔がドアップで映った。
______目にも留まらぬ速さで押し倒された、?
「何?……第二回戦でもする?」
「………君の心はいつも色んな音に塗れて賑やかだ。でも肝心の君の音は
「え、何、音?というか矛盾してない、それ」
「全部作り物なんだよ。繕った紛い物。分厚い何かに閉じ込めて、君の本当の音は隠されて何も聞こえない」
私を押し倒した状態で、彼は淡々と話す。
対して私は、段々と心の中が冷えていく感覚がした。
____この男は一体何を言っている?
「君は嘘吐きだ。出会った時からずっと、君は自分を嘘で塗り固めてる」
「………何が嘘って?」
「
「………」
「君がお母さんの話をする時、いつも君から何の音もしなかった。何も感じていない、唯の無音だった。あんなに悲しそうな顔をしても心の中は正直だった。居ない存在を騙っていたんだから当然だよね」
「………」
彼の目をジッと見つめ、静かに逸らす。
遠くの方で、大量のお金が茶封筒からはみ出しているのが見えた。
………心の中は正直、かぁ……
「…………ちゃんと演じてたつもりだったんだけどなぁ」
心底冷え切った心中。
無意識に、口からそんな言葉が転がり落ちた。
.
2311人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葵羽〜best friend group〜(プロフ) - 善逸の誕生日ということで、「善逸君はぴば!」のお話を見にきました…何回読んでも面白い…凄く好きです…! (2020年9月3日 14時) (レス) id: bccf6ec4c9 (このIDを非表示/違反報告)
聖 - 面白いです!更新頑張ってください! (2019年9月17日 20時) (レス) id: 5aaa39b99e (このIDを非表示/違反報告)
もこ - とてもすき! (2019年9月17日 12時) (レス) id: fcbb1370f0 (このIDを非表示/違反報告)
まえむ - え、鴉かっけぇ…続きが気になりすぎます!!!更新頑張ってください!! (2019年9月17日 1時) (レス) id: 572cac2bfb (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 更新ありがとうございます!何だかハラハラする展開…!続きも気になります(o>ω<o) (2019年9月15日 5時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぱんこ | 作成日時:2019年9月1日 11時