陰キャとさくまの水曜日 (ページ34)

今日:574 hit、昨日:34 hit、合計:500,466 hit

・ページ34

・

数日後、講評結果が出た。

私の読み通り、この勝負に勝ったのは阿部くんだった。
阿部くんの模型はターゲットもコンセプトもちゃんとしていて、それに伴って模型の完成度も高くてよく考えられていた完璧な建物だったから。

サークルき入らないといけない。
そう考えると後悔しちゃう気もするけど、だとしても私は評価されるような建物は作れなかったと思う。

私は全然優秀でもなんでもない。

講評の時間を終え、一応もらったデザイン賞の賞状をリュックにしまった。一人の教授に私の思いが刺さったらしい。何も貰えないと思ってたからそれだけでもありがたかった。

「お疲れさん」

部屋を出ると阿部くんが壁にもたれて佇んでいた。

あー、ハイハイ。条件は守るから今日はもう帰らせてよ。ずっと模型と向き合って体ガチガチなのよ。

「おめでとう、見事に最優秀賞で」

「おかげさまで」

「守るよ、逃げたりしないから。でも今日は帰って寝かせて」

「待ってよ、まだ何も言ってないじゃん」

クスクスと笑う阿部くん。また次の課題も勝負吹っ掛けられるのかなと思うと憂鬱だ。負けたからこれからも付きまとわれることは確定。

「勝負はドローってことで」

「え？」

でも、彼の口から出たのは意外な言葉。

「言ったじゃん、佐久間ポイントもつけようかって。佐久間、明らかにAちゃんの建物の方が好きそうだったよ」

あぁ、そんなことも言ってたっけ。

「いい建物だと思う、俺もすげえって思った。教授ウケはしないかもしれないけど俺もAちゃんの方が好きだよ、踊ってみたい」

今まで散々煽ってきて余裕そうな笑みを浮かべてた阿部くんはいなくて。穏やかで、優しい表情をしてた。困ったように笑いながら私を見る。

何だか印象が全然違う。逆に怖いくらいだった。

「サークルに入れとは言わないよ、でも俺も佐久間も変わらずに絡むからね。仲良くなりたいって思ったし。ま、ダンス見れるのが一番いんだけど」

「……まだ煽られるの」

「次は期待してるよ？」

ふふって笑った阿部くんはじゃあねって最優秀賞の賞状をひらひらさせながら去っていった。

この人もそれなりに踊るのうまいんだよね？
佐久間くんはみんなレベル高いって言ってた。

そう思うと少しだけ見たいと思ってしまった。
あぁ、悔しい。ただの陽キャ集団だと思ってたのに。