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「でもダンスが楽しくて、それだけで続けてた。そしたら知らない間に周りと仲良くなってんの。気が付いたら俺も新しく入った子にグイグイいっちゃうようになったんだよねぇ。あ、さすがに限度は見てね?」
佐久間くんは胡坐をかいている体勢から立って私に近づいた。相変わらずずっと笑顔でこの人の真顔を見たことないなと自然と思う。
疲れないのかな、こんなずっと何かしらの表情を作ってて。
「俺分かったんだよねえ、自分はなんでこうなったかって。そうやって仲良くなりたいってグイグイ来てくれる人がいたからなんだよ。だって、人見知りだと自分から話しかけられないでしょ?ちょっと嫌がらてもめげないくらいの方が後に仲良くなれると思うんだ。今思えばありがたいなって」
軽くステップを踏んでくるっと回った佐久間くん。
「それに!俺ダンスで自分を表現するのが好きだから!そのおかげで明るくなれた気がするの。だからね、Aちゃんのダンスが好きって伝わる踊りがすっげぇ好きなの。この子と一緒に踊りたいなーって」
正面でぴたっと止まって、ニコって笑う。
「だからさー、これからもグイグイいくよ?バイトよりも俺らと踊る方が楽しいーって思ってくれるまで、ね」
そう言うとじゃあねって私よりも先に体育館を去っていった。なんか嵐のようだった、あっという間にいなくなった。
急に何?なんでそんなこと話した?
別に聞いてもないし、私が何か話したわけでもない。
自分でも今の感情がどんなものなのかが分からない。
汗だくだったはずなのにいつの間にか体は冷えていて、それに気づいてハッとする。やばい、バイト遅刻する。
急いで体育館を出て時間を確認する。もう家に寄っている暇はない。直行だ、でもギリギリかもしれない。
小走りでバイト先に向かった。地味にちょっと距離あるのがしんどい、何故踊っている時より体力の消耗が激しいんだろうか。
着いた頃には入り時間ギリギリで息を切らしてスタッフルームに駆け込んだ私は目黒くんと康二くんに笑われた。間に合わせようと頑張った人を笑うなんて。
バイト中、そんな2人はどこか上の空な私を心配してかなんだかいつもより積極的に話しかけてきた。暇だから喋ってても普段は何も言わない店長がちょっと注意するくらい。
でもそれは走ってきて疲れたからだと思う。
たぶん、きっとそう。
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2021年5月20日 2時