・ ページ40
・
「しんどいべ、寝なよ」
うっかり話しかけ続けてしまいそうだ。別に楽しいし気にしてもいないから気づかなかったけれど、人数が増えて二人きりになることはかなり減ったんだなと思う。
やっぱり同期という間柄である阿部ちゃんとの空間は気づけば何も考えずに口を開いているし、多分俺自身も一つ気が抜けてしまうんだろう。
「……ふっか」
「ん」
「仕事…きてない？」
「来てないよ」
来たとしても絶対言わないけど。
その時は俺たちだけでしれっと解決していつの間にか終わらせてやんよと聞かれてもないのに心でそう唱える。正直な話、阿部ちゃんが捜査に居ないのは不安だけどね。
「ねぇ」
「ん」
「……あのさぁ」
「いや、無理して話さなくていいよ？しんどいでしょ」
「ううん…今朝よりだいぶマシだから」
寝たらいなくなろうかね。そう考えていたけれど阿部ちゃんは自分の腕で目元を隠しながら掠れた声を発し続ける。ずっと寝てたから寝れないのだろうか。話し相手にならいくらでもなるけど、時々苦しそうに息を吐くからさすがに心配になってしまう。
「寝れないから相手しろって？」
「…そうとは言ってない」
「ゲームすっか？」
「熱出てる相手にボロ勝ちしてそれ楽しい？」
今朝よりはマシという言葉はきっと本当なんだろう。いつもみたいな会話のリレーが出来てきて思わず楽しくなってしまう。今日の夜は相手がいないかぁと置いてあるゲーム機を見ると布団がこすれる音がした。
阿部ちゃんが、目元から腕を外した。
「……俺さぁ、ここにいていいのかな」
天井を見ながら呟いた一言。
それは、俺が恐れていたあの一言だった。
「何言ってんだよ、急に」
「いや…」
動揺している胸の内を出さないように平然と答えるも自分の心臓は明らかに早くなっている。3人から7人…ラウも含めれば8人になったこの組織で唯一の一般人である彼の言葉は苦しそう。
それは、熱のせいなのか。それとも心からくるものなのか。
「熱出して変にネガティブになってるだけでしょ」
「…そうかもね」
「余計な事考えるならさっさと治しなよ」
そう、きっとそうだ。体調が悪いとどうしたって思考はマイナスになるはずだ。阿部ちゃんのみならず自分に言い聞かせるように放った言葉。俺はいつも通りでいられているだろうか。
「……結局さ、理解できないのかなって」
「え？」
「怖いんだよね…まだ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1597人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽぷら(プロフ) - 美里さん» 美里様。お読みいただきありがとうございます！お返し遅れてすみません💦楽しんでいただけてるようでとっても嬉しいです。完結までよろしくお願いします(^^) (2023年3月31日 16時) (
レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - ayaさん» aya様。いつもありがとうございます！お返し遅れてすみません💦コメントしていただいた時よりだいぶお話が進んでますが楽しんでいただけてますでしょうか(^^)やっとこラストスパートですのでぜひ完結までよろしくお願いします！ (2023年3月31日 16時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
美里(プロフ) - 既にずっと面白いですが更に面白い展開になってきてわくわくそわそわです！いつも楽しく読ませていただいてます(^^)これからも応援してます！！ (2023年2月18日 22時) (レス) @page36 id: aee62fe4fc (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 今回のお話ものめり込んで読んでいます！1人ずつ仲間になっていく感じも大好きです！ヒヤヒヤドキドキのシーンでおあずけ〜(°▽°)みんなどうか無事でー！！ (2023年2月12日 19時) (レス) @page17 id: ff23500b61 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - 萌葱さん» 萌葱様。コメントありがとうございます！引き続きお付き合いいただければ幸いです(^^) (2023年2月12日 15時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽぷら
| 作成日時：2023年2月7日 21時
