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「私だって嫌だよ…」
そうなったらこっちだって。康二の目線から逃れるようにキッチンの片づけをしようとこの場から離れる。でも、背中から聞こえたサクマの声に立ち止まってしまった。
「じゃあサクマも行かない！」
さっきまで駄々をこねていたとは思えないほどに、急に意見を変えたサクマ。
「サクマはAと一緒にいるの」
やっとサクマはみそ汁を康二の前に置いた。そしてパタパタとキッチンの方に来ると私をぎゅーっと抱きしめた。
「…なに」
「泣いちゃだめだよ？」
私の顔を覗き込むサクマ。彼はこの一瞬で私の様子を感じ取った…？もちろん泣いてはいないけど、難しい顔をしていたのは否定できないだろう。
「サクマいっしょー」
兄や康二と比べたら小柄な身体。でも女の私からすればすっぽりと自分を覆ってくれる大きさ。昨晩のあの安心感を思い出して、そしてサクマが私の様子を汲み取ってこうしてくれたという事実。その二つのせいで悔しいけれど振り払う気にはならなかった。
「いいの？行ってきていいんだよ？」
「ううん！Aと一緒にいるの」
あんなに目を輝かせて行きたいと言っていたのに。今は私に向かって笑顔なサクマの健気さにまた自分が情けなく感じる。
「ふっかのとこいくー？」
「え…？」
「あ！シャボンだまするー？」
サクマ自身にも自我がある。でも一番の優先は私で、私が中心で。これだけ人間らしいのにやっぱり私を“主人”としてしまった以上、それは揺るがないんだと。
機械人形という存在の使命。何だかそれが残酷に思えた。
「…いいよ、サクマ。一緒に行こう」
「んー？どこいく？」
「テスト。康二とお兄ちゃんと」
気付いたらそう言っていた。私を抱きしめるサクマの手を掴んで、でも何だか恥ずかしくて見上げることはできなくて。
「空飛びに行こう」
「空？Aも？」
「うん、一緒」
少しだけ間が空いて何も言わないサクマを不思議に思って顔を上げた。すると、目が合った途端に顔がぱぁっと明るくなって
「こーじ！こーじ！」
「うぉ！どしたん」
「Aも空飛ぶ！一緒！」
その途端朝ご飯を食べてた康二の元へ興奮気味にかけていった。私を抱きしめたまま強引に。
「ほう？Aも行くん？」
「うん！一緒！」
すぐそこでしていた会話だ。康二と兄に聞こえてないわけがない。それでもまるで初めて聞いたというように康二は返し、そしてにやりと私に向かって笑った。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年12月2日 0時
