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お決まりの返しに笑った康二。やっぱり飛行テストの日だから普段よりもご機嫌なようだ。
「なぁ？でも阿部ちゃんならご飯食べれるように改造とかしそうやない？」
「それふっかも同じこと言ってた」
「てことはそうなんよ！さっくん楽しみやなー？」
普通に考えて、機械人形が人間と同じものを食べだしたらいよいよ大変じゃないか。その分も作ることになるし、何となくメンテナンスが大変そうだ。その手間が無いから機械人形はニーズがあるんじゃないのか。
「んー？」
「あはは、さっくんて可愛いやんな」
「にゃは、ありがとー」
お湯を沸かしながらそんな会話に呆れていた。テンションが上がって謎にサクマに話しかけ続ける康二と、意味が分かっているのかいないのかいちいち反応するサクマ。
「せや、さっくん空飛ばへん？」
何となーく彼らの会話を聞き流しながら朝食を作っているとそんな声が聞こえた。
「そら？」
「今日の飛行船な、いっぱい人乗れるねん」
窓の向こうに目線を向けて指を差しながら、康二は目の前で首を傾げた機械人形に話し続ける。
「あの空」
康二の楽しそうな声と笑顔が目に入り思わず手を止めてしまった。いつからだろう、康二が私を誘わなくなったのは。
「空とぶ？」
「せや、気持ちええで？」
彼が飛行船技師として働き始めてからテスト飛行の前日になると必ず私を誘いに来ていた。乗ろうや！楽しいで！って。
でも私は一度も飛行船に乗ったことはない。あの日から機械が絡むことに対して異常なまでの拒否反応を起こしていた私は康二に誘われるたびに怖いからとか、危ないからとか言って断っていた。
「サクマ飛ぶ！！」
タイミングがいいのか何なのか、サクマが窓の外を向いたタイミングで鳥が空を横切って向こうへと飛んでいった。それを目で追いかけたサクマは目を輝かせてそう言ったのだった。
「あはは。よっしゃ、楽しみやなぁ」
そのサクマのキラキラした瞳とそれを見て嬉しそうに笑う康二を見て。私があの時いいよと言っていたらこうやって康二は笑ったのだろうかとふと考えた。
でもあの時の私は昔からの幼馴染の康二が、康二までもが。
機械を生み出す道に進んだんだと、それが嫌だったのだ。
「あっ……」
煮込んでいたみそ汁がぐつぐつと音を立てる。それで意識を引き戻した私は、今までの会話なんて聞こえなかったふりをして兄を起こしに行った。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年12月2日 0時
