運転手 ページ11
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「どう？ちゃんとしてるっしょ」
座って窓から空を見上げているとやってきたのは兄だった。エンジンがかかったのか少しの振動と音が響き始める。
「運転…康二？」
「うん、最初はな。あいつが色々確認しなきゃいけないから」
兄が指さした先には少し見上げる位置にある運転席。少しだけ窓が取り付けてあって、立ち上がると康二の背中が見えた。
「康二が運転……何か想像つかない」
「お前が見てないだけで何回もしてるよ。むしろ最近は俺より康二の方が多いんじゃね」
「そうなの？」
「あいつ意外と運転うまいの。ついでに車も」
兄はその窓の方に行って彼の背中を眺め始めた。私も隣に並んでなんとか背伸びをしてよく見えるポジションにつく。後ろ姿でも真剣なのが伝わる様子、また幼馴染が一つ大人に見えた。
「A、だっこする？」
「え…いや、大丈夫」
「こーじ見える？」
「見える見える」
私の体勢がきつそうに見えたのか、サクマが私を後ろからホールドした。突然の事にびっくりしつつそんなことされたら恥ずかしいったらありゃしないと丁重にお断りした。
なのにもかかわらず
「うわっ…ちょ、サクマ？」
「もっと見えるよー」
私の身体は持ち上げられて、グンっと視界が上にあがった。兄よりも少し高くなった目線、そしてその兄はニヤニヤと私を見ている。
「うん、サクマありがとう。でもね、降ろしてほしいな」
「こーじ見えるよー」
「うん分かった見えてるから！」
「あははー！」
こいつ…笑ってやがる……！
何やら楽しそうなサクマは私を持ち上げたまま笑う。ついにサクマまで面白がってしまうのか、兄や康二側についてしまったのか。思ってもなかったこの機械人形の行動に私はため息をついた。ねぇ、私を主人としてるんじゃないの。
項垂れつつもまた康二の方を見るとさっきよりも手元や様々な方向へ確認をしている真剣な顔が良く見えた。康二ってこんな顔するんだな、泣き虫康二はもういなくなったのかな。
昔の小さな康二を思い浮かべてはまた複雑な気持ちになる。
ザッ、ザザーーー
何かの機械音声が流れた。それを聞いてか私をそっと下ろしたサクマは上の方をキョロキョロしながら不思議な顔をしている。
「みんな乗ったか？出発するで」
どこかしらにあるスピーカーだろうか。機械を通した康二の声が聞こえて、隣の兄がぐっと合図をして見せた。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2022年12月2日 0時
